クロスマッチや血液型検査に必要な検体量とは?緊急輸血時に看護師が押さえておきたいポイントと緊急度に応じた必要検体量をわかりやすく解説します。

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Q. 輸血のクロスマッチ用採血はどれくらい必要?

A.
血液型検査では「約2mL」、交差適合試験では「製剤1本あたり血清(血漿)が2滴・計約0.1mL」が必要最低量です。ただし、再検査や追加検査が必要な場合この限りではありません。

 輸血前には通常、輸血の安全性を確保する目的で血液型検査ならびに交差適合試験(クロスマッチ)*1が実施されます。検査結果が出るまで輸血開始を待つ必要があり、かつ輸血用血液製剤の準備には時間がかかります。

 しかし、輸血は患者の救命を目的に実施されるものであり、輸血検査に時間がかかったために製剤の準備が遅れることは避けなければなりません。
 したがって、緊急輸血が必要な場合、検査結果を待たずに輸血を実施することがあります。ここでは、緊急輸血時のポイントと緊急度に応じた必要な検体量について示します。

*1【交差適合試験】=輸血での副作用を防止するために、患者とドナーの血液を混合させ凝集の有無を調べること。

緊急輸血のポイント

 緊急時、赤血球輸血が必要な出血性ショック状態にある救急患者では、ただちに輸血検査用採血を行います。採血が不可能な場合には、出血した血液でも検査可能です。

 検査では、ABO式血液型*2とRh(D)抗原*3を調べます。血液型の確定は、検体の取り違いによる誤判定を回避するため、異なる時点において2つ以上の検体で確認されていることが原則となります。したがって、検査が1回しか行われていない場合は、『血液型の確定』にはなりません
 表1に、血液型が確定できない場合、できた場合それぞれの対応を示します。

*2【ABO式血液型】=赤血球膜上にある抗原によって分類される血液型。
*3【Rh(D)抗原】=赤血球膜上にある抗原のこと。D抗原をもたないRh-型と、もつRh+ 型があり、Rh- 型の人にRh+ 型の血液を輸血すると溶血などが起こる。

表1 緊急輸血実施の際のポイント(赤血球濃厚液〈RCC〉の場合)

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