20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。 

 この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

日赤看護婦は女の兵士であり
看護労働は
軍備の一部でしかなかった

 侵略戦争遂行のためには、どうしても負傷兵救護のための看護婦が大量に必要であった。日清・日露両戦役でその名を高めた日赤の看護婦たちのイメージは即、従軍看護婦として国民に理解された。日赤の看護婦養成が始まってまもなく出された「看護婦訓誡」によれば、看護することの意義は「傷病兵者を看護する国家的義務」であるとし、看護の精神は忠君愛国の精神でことたれりとするもので、これは太平洋戦争下にもひきつがれた。(中略)

 日赤看護婦は女の兵士であり、看護労働は軍備の一部でしかなかった。太平洋戦争下においては、病人の看護よりも、負傷者の戦場復帰こそ第一義的な目的であり、看護技術は大きく後退し歪められた。

(出典:『看護の自立2 看護婦の労働と仕事』33~34ページ、勁草書房)

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