20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 (ライフサポート社、2020年)。
この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。
「病院の看護は看護師の手で!」と
声高らかに謳い上げたのでしたが
いろいろな矛盾が多く生じたことも事実です
改革の第一の契機は、敗戦直後の連合国軍総司令部(GHQ)による制度改革によるものです。1948(昭和23)年の保助看法の創設を端緒として、教育、業務、看護管理体制全般にわたる大改革でした。とりわけ、完全看護(後に基準看護と呼ばれる)により、「病院の看護は看護師の手で!」と声高らかに謳い上げたのでしたが、いろいろな矛盾が多く生じたことも事実です。
それまで病院看護は、付添婦と家族によって行われていました。この完全看護体制でそれまで8,000人ほどいた付添が引き揚げ、引き替えに診療報酬上、1日10円という看護加算が付くようになりました。しかし、付添の労働力をカバーする人員補充のないままの制度でしたから、たちまち人手不足は深刻になります。そこで看護師が労働時間を延長すること、看護学生を看護師の人員に換算することで問題をクリアさせていたのです。
(出典:『看護の危機と未来 今、考えなければならない大切なこと』107~108ページ、ライフサポート社)
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