『やさしくわかる透析看護 第2版』の試し読み記事をお届けします。今回は、今回は、腎代替療法の1つである血液透析(HD)の特徴やメリット・デメリット、透析がある日のスケジュール例などを紹介します。
透析治療には、通院して治療を受ける血液透析(HD)と、在宅で患者自身が治療を行う腹膜透析(PD)、在宅血液透析(HHD)があります。HDは通院が必要となるため、時間の制約はありますが、専門の医療スタッフに治療を任せられるメリットがあります。
患者自身の生活スタイルや、医療者に任せたいなど、患者の希望を明確にして選択することが必要です。メリットデメリットをふまえて、患者の希望に沿った治療方法を検討しましょう。

HDの特徴
・血液透析(HD)は、血液の体外循環により人工腎臓に血液を通して尿毒素を除去する治療です。
・わが国では血液透析を受けている人が圧倒的に多く、慢性透析患者約343,508人のうち、血液透析を受けている患者は97%(332,923人)となっています(2023年12月末現在、「わが国の慢性透析療法の現況」より)。
・血液を体外に取り出し、透析器に循環させて体内に戻すことで、血液中の老廃物や余分な水分を除去する治療法です。
・医療機関に週3回通院し、1回3〜5時間かけて行われます。さらに長時間透析を行うこともあります。
・専門の医療スタッフによって治療が行われます。
・血液流量の多い血管が必要となるため、HDを始める前に太い血管(シャント、人工血管、表在化動脈)をつくります。シャント作成困難や心機能低下の患者にはカフ型透析用カテーテルが選択される場合もあります。緊急で血液透析をする場合は非カフ型透析用カテーテルを挿入する必要があります。
・定期検査による透析効率評価や薬剤投与による貧血への治療対策、合併症予防などが十分に行われて
います。
・HDは血管(シャント)に穿刺、あるいはカテーテルに回路を接続して行います。
腎代替療法の分類

HDのメリットとデメリット
メリット
・専門の医療スタッフの管理の下で行われる治療なので、治療中も安心して過ごすことができる
・治療日に他の透析患者と会い、話をする機会がある
・自宅から外出する機会になる。自分1人で通院する場合は、家族にとっても負担にならず、透析生活と家庭生活を切り離すことができる
デメリット
・週3回通院するため時間の制約がある
・悪天候や体調不良時でも通院する必要がある
・通院が自分でできない場合は家族のサポートや送迎サービスが必要になる
・毎回の透析時に2本の針を刺すため、針を刺す際に強い痛みを感じることがある。事前に自分で痛み止めのテープを貼り、痛みを軽減する方法がある
・透析日に受診や旅行などの予定があるときはあらかじめ透析日の変更や旅行先での透析予約などが必要になる
・災害時や自分の通院施設で透析ができなくなった場合、他に透析できる施設を探す必要がある
HD導入に関する患者への情報提供
・通常、医療機関に週3回通院し、主治医が処方した透析スケジュールに沿って、1回あたり3〜5時間の透析を受けます。
・毎回の治療開始前には体重と血圧を測定し、どの程度の水分を体から除去するかが決定されます。その後、医療スタッフがシャントに針を刺し、HD治療が始まります。治療の間はテレビを見たり、本を読んだり、寝たりしながら、ベッドの上で過ごします。
・透析中は、医療スタッフが治療の状態を確認します。透析が終わると、針と機械を外し、血圧を測定して帰宅します。
HD実施の流れ

透析がある日の例

・HDでは、基本的に週3回(月・水・金または火・木・土)医療機関に通って治療を受けます。治療にかかる時間は3〜5時間程度ですが、通院にかかる時間、着替えや血圧・体重測定など治療開始までの準備、治療終了後の着替えや休息などの時間もかかるため、透析日は透析を中心とした生活になります。透析がない日は自由に過ごすことが可能です。
・HDには、午後や夕方から透析を始めるパターンもあり、職場と就労時間などを相談して、透析治療に必要な時間を確保しながら仕事を続けている人もいます。
・夜寝ている間に医療機関で行う「オーバーナイト透析」や自宅で患者自身が行う「在宅血液透析
(HHD)」という方法もあります。
・HDを行う場合は、透析を始めた後の生活をイメージしながら、通院にかかる時間や送迎の必要性、透析のスケジュールなどを考えて、HD治療を受ける医療機関について主治医と相談して選択する必要があります。
- 1)日本腎臓学会,日本透析医学会,日本移植学会,他編:腎不全 治療選択とその実際 2024年版.
https://cdn.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/2024allpage.pdf(2025.7.1アクセス)
2)日本腎臓学会ホームページ:一般のみなさまへ 腎臓病ガイド.
https://jsn.or.jp/general/guide/(2025.7.1アクセス)
3)Baxterホームページ:いっしょに考える腎臓病.
https://jp.mykidneyjourney.com/ja/treatment-options/home-haemodialysis(2025.7.1アクセス)
\続きは書籍で/

やさしくわかる透析看護 第2版
小林修三 監修、日髙寿美 編著、愛甲美穂 編著
B5・240ページ、定価2,970円(税込)
照林社
前回までの記事はこちら↓
腎代替療法における意思決定支援と腎移植の基礎知識
腹膜透析(PD)の特徴や注意点、患者への説明ポイント
血液透析の目的と帰室後の血圧変動のリスク
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