内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)後に注意が必要な急性膵炎の原因や徴候を紹介。早期発見、予防のポイントもわかりやすくまとめています。

 胆道系・膵臓疾患(表1)が疑われた場合、まず非侵襲的な検査(CT、MR胆管膵管撮影、超音波内視鏡)などが行われます。その所見によって精査や病理診断、治療を目的として、内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(endoscopic retrograde cholangioapancreatography、ERCP)が行われます(図1)。

表1 内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)が行われる疾患

“胆道系”に形態異常を示す腫瘍、炎症
●総胆管結石 ●胆道腫瘍
●乳頭腫瘍
●胆管狭窄・拡張
●急性胆管炎 ●閉塞性黄疸

“膵管”に形態異常を示す腫瘍、炎症
●膵石 ● 膵管狭窄・拡張
●膵腫瘍 ●膵嚢胞

図1 ERCPのイメージ

ERCPのイメージイラスト

 これは内視鏡を用いて十二指腸乳頭部から膵管や胆管にカテーテルを挿入し、X線透視下で造影剤を注入しながらガイドワイヤーを進めるものであり、通常、1時間程度で行われます。

 ERCPに伴う偶発症には「急性膵炎」「腸管損傷・穿孔・出血」「急性胆道感染症」「麻酔剤・造影剤などの薬剤による過敏症」がありえますが、なかでも今回は、最も頻度が高く重症化しやすいERCP後の急性膵炎の徴候について示します。

起こりがちな急変

●上腹部・背部の疼痛
●嘔気・嘔吐
●呼吸困難
●乏尿
⇒意識障害や呼吸不全、ショックにつながる急性膵炎を疑おう!

急性膵炎の原因とは?

 ERCP後に急性膵炎を発症するものはERCP全体の4.5%といわれています1
 原因としては、検査による乳頭浮腫や膵管攣縮により膵液の流出障害が起こることや、造影剤による直接刺激、造影剤注入時の逆行性感染などが考えられています。

 急性膵炎が重症化した場合は、膵酵素の逸脱による影響が全身へと及び、意識障害呼吸不全ショックにつながります。急性膵炎の10~20%は重症例となり、重症例の死亡率は約10%と言われています2

 発症後、4日以内に膵臓は壊死し、その後、2~3週目以降は膵壊死巣への感染(感染性膵壊死)、膵膿瘍、仮性膵嚢胞が出現します。また感染性膵壊死は敗血症を伴う重要臓器障害の発生に関与し、発症2週間までは、全身性炎症反応症候群(SIRS)の恐れがあります。

急性膵炎の早期発見・対処のポイントは?

 具体的な徴候は、疼痛(特に上腹部での痛み)、消化器症状(嘔気・嘔吐)、呼吸困難乏尿などです。
 帰室直後は、「30分後」「1時間後」「2時間後」と経過を追って、以下の観察を行いましょう。

①痛み・消化器症状を聞く

 疼痛に関してチェックすることが重要です。NRS(numeric rating scale、数値的スケール)による痛みの程度、部位、性質、1日パターン、動きとの関連をみていきましょう。また、嘔気・嘔吐の有無も確認します。

 上腹部痛、 背部痛、 嘔気があった場合は急性膵炎を疑い、医師に報告します。膵酵素の活性化を阻害するためにタンパク分解酵素阻害薬(注射用フサン®、注射用エフオーワイ®など)を重症度に合わせて投与します。

 また、腸内細菌が腸管内から全身に播種するのを予防するために、絶飲食、あるいは経過によって経鼻十二指腸チューブによる経腸栄養が開始されます。経管栄養は、消化をほとんど必要としない成分で構成された、きわめて低残渣性、易吸収性の高カロリー栄養剤であるエレンタール®の注入が行われます。

 持続する上腹部痛は、背中を丸めると痛みが和らぐという特徴があるため、前屈位をとってもらいます。また痛みが強い場合は、抗炎症作用のあるNSAIDs(ボルタレン®など)や非麻薬性鎮痛薬(レペタン®など)の投与を行い、苦痛の緩和に努めます。

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