てんかんの新しい分類

おさえておきたいこと

『てんかん診療ガイドライン2018』の変更点
●ガイドラインでは、選択薬剤の変更や、用語・定義の変更がなされている

成人てんかんの薬物療法における選択薬剤が変更

 新規抗てんかん薬が日本でも使用可能となり、ガイドラインで推奨される薬剤も変化しました。 焦点(部分)てんかんでは、第一選択薬に新規抗てんかん薬(ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート)を含む、5剤が挙げられています。
 第二選択薬にもラコサミドやペランパネルなどの新規抗てんかん薬が追加されました(表1-①)。

表1 部分てんかん、全般てんかんでの選択薬剤(赤字は新規抗てんかん薬)
(文献1より一部改変して引用)

 全般てんかんでは、基本的にはバルプロ酸が第一選択です。新規抗てんかん薬は全般てんかんでは第二選択薬として挙げられています。

 ただし、妊娠中にバルプロ酸を内服していた母から生まれた子どもの奇形や認知機能低下のリスクが報告され、妊娠可能年齢の女性ではバルプロ酸を用いず、奇形のリスクが少ないレベチラセタムやラモトリギンが使用される傾向にあります(表1-②)。

長時間ビデオ脳波モニタリング検査(VEEG)の有用性が追加

 長時間ビデオ脳波モニタリング検査(long-term video-EEG monitoring:VEEG)は、通常数日間にわたり連続してビデオと脳波を同時記録する検査です。

 患者さんの「いつもの発作」を記録・解析することで、てんかん発作と非てんかん発作の鑑別、焦点(起始)発作と全般(起始)発作の鑑別、発作焦点の局在診断などが可能になります。 これにより、診断や治療方針を大きく改善できる可能性があります。

薬剤による発作抑制が難しいものを、「薬剤抵抗性てんかん」の呼称に

 適切な抗てんかん薬を適切な量で2剤使用しても、発作が抑制されないものを「薬剤抵抗性てんかん」といいます。

 薬剤抵抗性てんかんのなかには、外科治療や免疫療法など、抗てんかん薬以外に有効な治療手段がある場合があります。

 また、てんかんの診断がそもそも違う、あるいはてんかんの病型診断が間違っている、服薬アドヒアランス不良など、“みかけの”薬剤抵抗性てんかんの場合もあります。

「てんかん重積」の定義が変更

 従来、30分以上続く発作を「てんかん重積」と呼んでいましたが、重積状態が長く続くほど薬剤抵抗性となることが明らかとなり、けいれん発作については5分以上続く場合をてんかん重積とし、治療を早期に開始すべきであることが示されました。
 それに伴い、治療のフローチャートも経過時間に基づき3段階に分け、より明確になりました(図1)。

図1 てんかん重積状態の治療フローチャート
(文献1より一部改変して引用)
1.日本神経学会監修,「てんかん診療ガイドライン」作成委員会編:てんかん診療ガイドライン2018.医学書院,東京,2018.

1.日本神経学会監修,「てんかん診療ガイドライン」作成委員会編:てんかん診療ガイドライン2018追補版2022.
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_tuiho_2018_ver2022.html(2024.5.8アクセス)

この記事は『エキスパートナース』2020年6月号の記事を再構成したものです。
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