『救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド』①どんな内容?

おさえておきたいこと

『終末期看護プラクティスガイド』の活用のしかた
●POSに基づいて構成されているため、日々の看護実践で使用できる
●問題が明確になったら次の「目標」へ進み、「目的」を達成していく

「目的」「目標」「項目」「内容」で構成。「内容」には、「行動(例)」を提示

 看護師は、終末期かどうかにかかわらず、すべての看護実践において、患者さんや家族の問題解決方法である問題志向型システム(POS、図1)に基づいて看護を提供しています。
 終末期看護プラクティスガイドは、POSに基づく看護過程の展開に活用できるように構成することで、日々の看護実践で使用できるようになっていることがポイントです。

図1 問題指向型システム(POS)

 終末期看護プラクティスガイドの各項目は、すべて、「目的」「目標」「項目」「内容」で構成されており、さらに「内容」に関する具体的な「行動(例)」が記載されています。「項目」と「内容」が実際に実践する看護に該当します。

 具体例として、表1に直接ケアの1つである「意思決定支援」のガイドを示しました。

 意思決定支援の「目的」は、「患者・家族が治療やケアを選択・意思決定できるように支援する」ことです。この目的を達成するための目標には3つありますが、そのうちの2つを表1に示しました。

表1 終末期看護プラクティスガイド(医師決定支援の一部を抜粋)

 目標の1つ目は、「意思決定支援に必要な情報収集・アセスメントをし、問題を抽出できる」となっています。これは、POS(図1)の「①情報収集」「②アセスメント」「③問題の明確化」に該当する部分です。

 どのような情報を収集し、アセスメントするのかについては、「項目」や「内容」に記載されています。看護実践においては、この「項目」や「内容」を参考に「①情報収集」と「②アセスメント」を行い、「③問題の明確化」をすることになります。

 問題が明確になったら、目標の2つ目の「患者・家族とともに最善の選択を検討し、意思決定を支援できる」に進みます。

 「項目」や「内容」はPOSの「④介入」に該当する部分であり、具体的な介入を示している部分です。目標2の「行動(例)」にあるように看護師は、医療チームの支援体制をつくるために、患者・家族の状態と支援の方向性を共通理解できるように、カンファレンスを開催するなどの具体的な介入を行うわけです。

 終末期看護プラクティスガイドが最も多く活用される場面は、患者さんや家族への直接ケアのときだと思います。 受け持ち看護師として、今日1日、どのような看護をしたらよいのかに迷ったときや、今日必要な看護を考えるうえで参考にしていただけたら幸いです。

根拠を知って、 意味づけをもってケアを行うことが重要

 人生の終末期にある患者さんや、大切な家族を喪(うしな)う家族は、計り知れない苦悩や悲しみの渦中にあると考えられます。医療者とはいえ、そのような状況にある患者さんや家族とかかわり、good deathを迎えられるように支援することは容易ではありません。

 本ガイドを活用する際に、ケアの根拠を知ることで、意味づけをもってケアを実践することができるでしょう。

 特に、終末期にある患者さんや家族の特徴(対人理解)、看護師の役割、終末期看護に必要な理論や先行研究、スキル(特に、危機理論や悲嘆理論、意思決定モデル、コミュニケーションスキル)などを知ることにより、看護の行うべきことが明確になると思います。

 終末期看護プラクティスガイドの解説版もチェックしてみてください。

1.日本クリティカルケア看護学会終末期ケア委員会,日本救急看護学会終末期ケア委員会:救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド(第2部 表).
http://jaen.umin.ac.jp/pdf/EOL_guide2.pdf(2024.2.9アクセス)

この記事は『エキスパートナース』2020年11月号の記事を再構成したものです。
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