医療事故につながる可能性のある危険な薬に注意!今回はハイリスク薬の1つである向精神薬を取り上げます。精神的・身体的依存や、抗コリン作用などによる副作用について解説。正しい使い方を確認しましょう。

向精神薬は長期投与すると、精神的・身体的依存、過鎮静などに

危険な理由:長期投与により、精神的・身体的依存が生じることがある

1)観察の指示が適切になされない場合がある

 向精神薬というと、イライラや不安を軽減する薬、統合失調症などの精神疾患の治療薬というように、何となく理解しているようで、薬効や副作用などの詳細は精神病院や精神神経科の専門病棟に勤務していなければ、なかなか一般病棟の看護師にはわかりづらい領域の薬ではないでしょうか?

 向精神薬は患者さんの状態に合わせて、種類や投与量を慎重に決めなければなりません。しかし、多くの病院では常勤の精神科医が少ないこともあり、増量や減量・中止などの判断が主治医の経験に基づいて行われることも多くあります。

 そのため、投与後や中止後の患者観察の指示が看護師に適切に出されていないことで、異常の早期発見が遅れるというリスクも発生します。

2)対症療法的投与がそのまま続いてしまうことがある

 また、術後せん妄や療養環境の変化による不眠などの患者の一時的な症状に対して、急性期病院では向精神薬が対症療法的に投与されます。

 しかしその後、療養型病院や在宅診療の医師や薬剤師に、その投与目的が正確に伝えられないことがよくあります。そのため、持参薬や退院処方として受け取られ、薬が、長期投与として漫然と処方されてしまい、それにより、精神的・身体的依存を生じたり、脱力感や過鎮静から高齢者のフレイルを助長してしまうことがあります。

注意するポイント:多様な副作用をもっている

 向精神薬は、以下に示すような副作用が生じる危険性があります。

1)抗コリン作用による副作用

 閉塞隅角緑内障をもつ患者さんには使用してはいけません(禁忌)。
 また、高齢者や心疾患の患者の場合には以下に示したような副作用が生じることがあるため、注意深く観察することが重要です。

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