医療事故につながる可能性のある危険な薬に注意!今回は投与経路を間違えると重大な事故が起こる、ベナンバックス®について。ワンショット静注した場合のリスク、正しい使用法を解説します。
ワンショット静注すると低血圧や不整脈に
ペンタミジンイセチオン酸塩(ベナンバックス®)はカリニ肺炎に用いられる薬剤で、吸入薬としても、注射薬としても投与できます。下記に効能・効果および用法・用量を示します。注射する場合は、希釈して1~2時間かけて点滴静注することが必要です。
もともと副作用として重篤な低血圧や不整脈が現われることあるため、事例①のように、ワンショット静注してしまうと急激に血中濃度が高くなり血圧低下、心肺停止が起こります。「投与経路」だけでなく、ワンショット静注か点滴(静注・筋注)か、「投与方法」にも注意が必要です。
事例① 吸入指示のベナンバックス®をワンショット静注した事例1
●化学療法中の患者さんに対し、カリニ肺炎予防でスルファメトキサゾール・トリメトプリム(バクタ®)を使用していた。
●腎機能低下によりバクタ®を中止し、代替薬のベナンバックス®を吸入する予定となっていた。
●ベナンバックス®はコンピューターシステム上、吸入処置でのオーダーができないため点滴薬でオーダーし、掲示板(医師から看護師に向け、連絡事項を知らせるための伝言板)に「吸入」と記載して投与する運用であった。←投与指示が独自の方法でなされていた
●看護師は入院注射処方箋の「末梢」との記載内容を見て、ベナンバックス®をワンショット静注するものと誤認し、患者さんに静脈内ワンショットで注射。
●結果として、急速静注が原因での血圧低下、静注の場合も心肺停止を起こした。
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