医療従事者が運営し、さまざまな発信をしている「メディッコ」。多職種連携について、具体的にどんなことをしているか情報共有しました。第4回はコミュニケーションエラーから生じる、目標やゴールのずれ、優先順位の違いについてです。
リハビリテーションスタッフとしては活動性を上げたい。看護師は転倒を防ぎたい……。両者の間で思いが異なり、バトル勃発。患者さん自身は認知機能の低下があり、状況判断ができない。しかし、伝い歩きができないと自宅には戻れないために、転倒リスクを気にして安静にしたくない。こうしたお互いの職種のゴールのずれ、優先度の違いがある。

すま
すま
作業療法士、12年目。大学病院勤務。看護師さんの顔と名前が覚えられず苦悩している。いつも誰かを探している。

あみ
あみ
助産師、8年目。周産期母子医療センター、総合病院産科での勤務経験あり。現在は助産院勤務。他職種のなかでは薬剤師や栄養士、ソーシャルワーカー、保健師とのやりとりが多い。

S.O
えすおー
薬剤師、9年目。中小病院勤務薬剤師。看護師さんとのやりとりが多い。企業勤務時代に電話の取り方を鍛えられた。

うめだ
うめだ
管理栄養士、6年目。給食委託会社から整形外科・内科クリニックへ転職。現在は、医師、看護師、柔道整復師、理学療法士、医療クラークとのかかわりが多い。
専門分野や視点の違いがあるゆえのズレ
すま(作業療法士) そもそも職種の専門分野や視点が違うので、こうしたずれは起こってしまって当然ですよね。少し動ける転倒リスクの高い患者さんでは、このバトルが頻発しますよね。現状だけを捉えると、それは転倒しないほうがメリットは大きいので、転倒予防は最重要と考えていいと思います。
ただ、その生活が続いたときに、1週間後、1か月後にどうなるかを考えると、廃用症候群を引き起こしてしまう可能性が……。その予防のために、リハビリテーションでは運動できる時間と機会を提供しています。
あみ(助産師) 私は産科なのでリハビリテーションスタッフとバトルする場面はないですけれど、看護師の友人によるとよくあるみたいですね。看護実習のときを思い出してみると、リハビリテーション室では患者さんも「ここではリハビリテーションをする!」という意識が強いので注意力や集中力が高まっているけれど、病室に戻るとそこは日常生活なので、注意する気がそもそもない状況が多いように感じました。日常生活で転倒してしまうと、看護師のインシデントになってしまいますからね。
すま(作業療法士) 患者さんにとって、病棟に戻ると日常になるっていうのは、本当にそうだと思います。僕たちも普段はそんなに気をつけて歩いているわけじゃないですから。
”気をつけて”歩かなきゃいけない状態は、 僕は自立じゃないと思っていますが、 このへんの解釈は人によってずれることがあるのかもしれないですね……。
あみ(助産師) 何を「自立」 とするか……そうした言葉1つにしても、それぞれの職種で見方が違いそうですよね。そもそもそのことに気づかないことも多いでしょうし。看護師と他職種とのすり合わせが必要かもしれませんね。
S.O(薬剤師) 私はリハビリでの状況はわからないですけれど、「夜眠ってほしいから睡眠薬を出してほしい看護師サイド」VS「認知機能が低下してリハビリテーションに影響するから、使ってほしくないリハビリテーションスタッフ」という状況には出くわしたことがあります(笑)。薬剤師としては板挟み状態でしたね。
うめだ(管理栄養士) 私は整形外科クリニックなので、あまりリハビリスタッフと看護師がぶつかることはないですね……。外来では、各職種の視点で患者さんの自宅での生活に注目することが多いので、優先順位やずれはないように思えます。
目標や優先順位の違いに対する対策や、実際の工夫は?
あみ(助産師) 患者さんにとって、リハビリテーション室内での目標と、病室などの生活場面での目標を立てたほうがいいのかなと思ったりします。もちろん、その際はリハビリテーションスタッフが評価してくれた患者さんの自立度を聞いたうえで、病室での様子などを伝えつつ調整すればいいのではないでしょうか。
いわゆる「できるADL」と「しているADL」の違いをお互いに知って、「しているADL」で患者さんの生活を重視するような考え方なのかなと思いました。
うめだ(管理栄養士) クリニックでは患者さんが思うゴールに向けて、各職種の視点で考えて、患者さんが一番望む生活をみんなでサポートしていくようにしていますね。同じ組織内で訪問看護、リハビリテーションも行っているのですが、日常生活での簡単な動作のリハビリテーションは看護師も役割を担っています。
さらに、「1人で外に出たい」「買い物に行きたい」など、患者さんの要望や自立度に合わせて理学療法士がリハビリの介入をしている状況もあります。病棟より役割分担が明確なので、動きやすいのだとは思いますね。
S.O(薬剤師) 薬剤師としては、板挟みになる場面もあるので、定期的な多職種のカンファレンスで客観的にすり合わせができるようにフォローを行いましたね。優先順位、方針がずれたときはいろいろな視点を入れ、腰を据えて調整することも重要かと思いました。
すま(作業療法士) リハビリスタッフが患者さんに直接かかわるのは、1日のなかでも1時間前後です。そのほか23時間をメインに支えているのは看護師なので、患者さん本人が安全にできる範囲を確保するため、看護師さんとの相談はより密に行っていますね。
あとは、本当に小さなことかもしれないんですが、言い方の問題も大きいと思います。リハビリテーションの人は、患者さんの身体能力や環境調整を細かく評価していて、その人ができるかできないかの判断には自信をもっていると思います。そのせいか、「〇〇は自立でやってください」と命令形になってしまいがちです。このときの言い方としては「〇〇がリハビリテーションでできるようになったんですけど、病棟で〇〇を自立にするにはどう思いますか」と尋ねてみる形にしてはどうでしょう。
こうした言い方を変えるだけで、コミュニケーションエラーを未然に防ぐことができますよ。
あみ(助産師) すまさんの伝え方の説明は、すごくわかりやすいです。どうしても一方的に言われると、仕事を押しつけられているような感覚になってしまいますよね。
まずは相手に聞いてもらえることが第一で、命令形で言いっ放しにならないように相互コミュニケーションがとれるよう、気をつけようと思います。
この記事は『エキスパートナース』2020年7月号連載を再構成したものです。
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【第5回】コミュニケーションエラー➂多職種が複数かかわった際のインシデント
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