脳への影響として、眠りも浅くなる

 もう1つ、更年期の脳への影響でよく見られるのが、眠りが浅くなることです。

 エストロゲンが低下すると、眠りが浅くなります2。授乳期で、赤ちゃんがちょっと泣いたら母親は目覚めるのに、夫はぐっすり眠っている、なんていう経験をした方もいらっしゃると思いますが、これは授乳期のお母さんの血中エストロゲンレベルがとても低下していることと関連していると考えられています。

 更年期も、眠りが浅くなりがちです。寝つきが悪くなる人もいますし、短時間で目覚めてしまう人もいます。疲れやすいのに、眠れない。つらいですが、これまでの睡眠パターンにこだわらず、ご自身が今日より明日楽に過ごせるための工夫をしてみてください

 臨床試験では、女性ホルモン補充は睡眠に関連したQOLを向上させるという結果がでていますが3、それでもすべての人が女性ホルモン補充を開始しただけで、ぐっすり眠れるわけではありません。いっとき、睡眠薬を使うのもよいと思いますが、その前に、不眠に関する行動療法をしてみるのがおすすめです。参考になる書籍を紹介しておきます。

おすすめ書籍

渡辺範雄『自分でできる「不眠」克服ワークブック 短期睡眠行動療法自習帳』(創元社、2011年)
マシュー・ウォーカー『睡眠こそ最強の解決策である』(SBクリエイティブ、2018年)
田中奏多『眠る投資 ハーバードが教える世界最高の睡眠法』(アチーブメント出版、2020年)

1.Cohen LS,Soares CN,Joffe H:Diagnosis and management of mood disorders during the menopausal transition.Am J Med 2005;118 Suppl 12B:93-97.
2.Kravitz HM,Ganz PA,Bromberger J,et al.:Sleep difficulty in women at midlife:a community survey of sleep and the menopausal transition.Menopause 2003;10(1):19-28.
3.日本産科婦人科学会,日本女性医学学会編監:ホルモン補充療法ガイドライン2017年版.日本産科婦人科学会,東京,2017.

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この記事は『エキスパートナース』2022年7月号特集を再構成したものです。
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