さまざまな人と接する機会の多いナースが、円滑な関係構築のためにできる”ちょっとした言葉選びの工夫”を紹介します。

訴えが多い患者さんへの対応、どうする?

患者さんには「万が一〇〇になったら…」という不安がある

 看護師のもつ情報に比べて、患者さんのもつ情報は圧倒的に少ないことが普通です。看護師が、症状などの経過を丁寧に観察・対応していても、患者さんは自分の経過が通常の範囲なのかがわかりません。不安が強い方ほど、事前に受けた説明との小さな違いに気づきやすくなります。

 このようなときに一般的な説明を繰り返されたり、単に「大丈夫ですよ」と言われたりすると、「自分の個別の状況が正確に理解されてない」とむしろ不安が増してしまいます
 自分の気がかりを聴いてもらえなかった患者さんは、「理解不足が原因で、○○になったら大変だ」「自分がしっかりしなければ」と看護師へ不信感さえもつようになり、どんな小さな気がかりもすべて看護師に確認・訴えてくるかもしれません。

患者さんの思う“当たり前”と、病院の“当たり前”のズレが不満を招く

 患者さんのこれまでの生活と病院生活との違いは、「治療上の制限」「ケアを行う人数」「病棟アメニティの質」などにもよりますが、通常、病院生活のほうが生活の質が低下して、不快さや不満をもちがちです。

 看護師は、生活の質を「患者さんのこれまで」に合わせることはできません。このような“しかたがない”ことに不満を訴える患者さんにいらだち、“わがままな患者”として、患者さんの訴えを受け流してしまうことがあるかもしれません。

 すると、訴えを受け流された患者さんは、「理解しようとしない」「自分がおかしいと気づきもしない」「社会の常識を知らない」などと、看護師への不満が増幅し、怒りにさえ発展してしまうこともあります。