社会全体が「子どもの人権にかかわる問題」と認識し、ヤングケアラーが相談しやすい環境をつくっていく必要がある

 英国では、ヤングケアラーの実態把握や支援、法整備に早い時期から取り組んでいます。ヤングケアラー支援組織の代表者は、「ヤングケアラーが必要としていること」として以下の4点を挙げています4

①子どもでいること
②聞いてもらい、意見を取り入れてもらうこと(自分が社会の中で認められていること)
③話せる人がいること
④専門職に知ってもらい、理解してもらうこと
(文献4より引用)

相談しやすい環境をつくり、子ども自身が安心して誰かに話し、情報を共有できる場所が必要です。

 ヤングケアラー・若者ケアラーのピアサポートグループの活動も広がっています。同じ境遇や課題をもつ仲間が、体験を語り合い、感情を共有することで、安心感や自己肯定感を得ながら、互いに支え、助け合い、問題の解決を図ることができるとされています。
  図1の写真の団体では、家族の介護・世話・サポートをしている若い世代のケアラーを支援しています。

図1 コロナ禍前のピアサポートグループの定例会
(横浜ヤングケアラーヘルプネットより提供・許諾を得て掲載)

 ヤングケアラーの支援は、子どもの人権にかかわる問題であり、社会全体で早急に取り組むべき事柄であると言えます。
  社会の関心が高まっている一方で、ヤングケアラーという言葉が1人歩きしてしまい、当事者の望まない方向に支援が向くなどの懸念もあり、今後の動向にも注視していただきたいと思います。

1.青木由美恵:私たち看護職が出会ったヤングケアラー.Nursing Today ブックレット編集部編:ヤングケアラーを支える 家族をケアする子どもたち。.日本看護協会出版会,東京,2021.
2.公益財団法人日本ユニセフ協会(Unicef)ホームページ:子どもの権利条約.
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig.html(2024.2.14アクセス)
3.一般社団法人日本ケアラー連盟:ヤングケアラー・若者ケアラー(パンフレット).2015.
4.Ben Hogbin,Alison Cross:イギリスにおける“ヤングケアラー支援“ “Winchester Young Carers”の活動から.(尼崎市講演会:家族のケアを担う子どもたち“ヤングケアラー”への支援を考える〜イギリスの支援団体の取り組みから学ぶ〜〈2019年2月23日開催〉.の講演内容)

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この記事は『エキスパートナース』2022年2月号の記事を再構成したものです。
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