おさえておきたいこと

がんゲノム医療の中核:がん遺伝子パネル検査
●がん遺伝子パネル検査では、 多数のがんに関係する遺伝子を一気に調べる
●「標準治療終了後または終了見込みの固形がん」に保険適用

1回の検査で、発がんに関与する多数の関係遺伝子を調査可能

 これまでは、肺がんならEGFR遺伝子やALK遺伝子、胃がんや乳がんならHER2遺伝子、大腸がんならKRAS遺伝子(KRAS遺伝子は治療対象ではなく、治療が効かなくなることを予測するために調べています)など、特定のがん種によく起こっている遺伝子変異を1つずつ調べていましたが、技術の進歩やさまざまな遺伝子変異に対する薬がたくさん開発されたこともあり、1つひとつの遺伝子変異を調べるよりも、がんに関係する遺伝子を一気に調べるほうが効率がよくなってきました。

 そこで登場したのが「OncoGuide™NCCオンコパネルシステム」や、「FoundationOne®CDx がんゲノムプロファイル」「FoundationOne®Liquid CDx がんゲノムプロファイル」などの「がん遺伝子パネル検査」(がんゲノムプロファイリング検査とも呼びます)と呼ばれるものです(図2)。

図2 がん遺伝子パネル検査のしくみ

 “パネル”と呼びますが、決してなにか液晶パネルのような光り輝く「板」があって、がん細胞を入れると自動的に遺伝子の変異を教えてくれるわけではありません(恥ずかしながら、私は当初そのようなものを想像していましたが……)。

 たくさんの遺伝子変異を検出できる検査薬の1つのセット(例えば、OncoGuide™ NCCオンコパネルシステムなら124遺伝子)を“パネル”と呼び、1回の検査で発がんに関係する遺伝子を一気に調べることができ、それぞれの患者さんに最適な治療薬を提案できるようになります

現在、 総額56万円が必要

 こういった検査は、一昔前だと1回行うだけで100万~1,000万円以上かかっていました。現在では技術の進歩により安く行うことが可能になったとはいえ、現在でも総額56万円かかります。

 「標準治療終了後または終了見込みの固形がん」(白血病やリンパ腫など血液のがんの患者さんは適応外です。すみません……)の患者さんに関しては、保険適用が認められているので、自己負担額は1~3割となったり、高額療養費制度が適用されるので、それよりは減額されます。

 こういったがん遺伝子パネル検査により新たな治療ターゲットを見つけ、それに対する治療を行うことががんゲノム医療の中核です。

 ちなみに、単純に「がん遺伝子検査」という場合には、EGFR遺伝子やKRAS遺伝子の変異を検査すること以外にも、血液中のDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)を検出してがんの早期発見をしようという自費診療を指すこともあり、後者の場合は保険適用が認められていないため、高額な費用がかかる可能性があり、患者さんが希望された場合には注意が必要です。

がんゲノム医療ってどんなことを行うの?②

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この記事は『エキスパートナース』2020年4月号の記事を再構成したものです。
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