忙しい医師だけでは不安。すべて把握している「誰か」をチームに
さて今回、患者となってみると、チーム医療はまだ未成熟である、もしくは弊害もあると感じられました。
一点はコミュニケーションについてです。チーム医療で一番大事なのは言うまでもなく情報共有であり、電子カルテとカンファレンスがメインと思われますが、忙しい業務のなかでのカンファレンスはけっこう限界があるものです。やはり中心は電子カルテということになります。
しかし、スタッフ個々の心がけしだいと言ってしまえばそれまでですが、電子カルテの記載のみで「状況をすべて把握している」と勘違いする人もいるはずです。業務に追われてしまい、患者とは最低限のやり取りしかできないのかもしれませんが、カルテの記載は必要最小限のもので、かなりはしょられている可能性があることを考えておく必要があります。
また患者さんの気持ちは日々(場合によっては一日のなかでも)変化します。電子カルテの情報のみにとらわれず、ときどきは患者とコミュニケーションをとって自分自身でも確認することが重要ではないでしょうか。そしてそのコミュニケーションで救われる患者も少なくないと思います。
もう一点、これは以前からですが、役割分担されすぎていることで、チームの他職種の業務内容に関していわゆる「傍観者」になってしまっている場合があります。やはり他職種の領域でも、少しは踏み込んでいくことが重要だと思います。
またそれにも関係しますが、患者の立場になってみると、自分の全体の病態を把握しているはずの主治医以外に、「自分のことを全部わかってくれている人がいるのかな?」と時おり不安になります。やはり患者に寄り添うという意味で、「治療方針」「他職種のかかわり」「精神的状態」などすべてを把握している「医師以外の誰か」が、チーム医療には必須であると実感した日々でした。
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