がん治療・ケアの最新知識を紹介。今回は、新しい分子標的治療薬である血管新生阻害薬の特徴や、看護師が知っておきたいポイントを解説します。代表的な副作用や観察ポイントを確認しましょう。

 がん細胞の増殖や転移には、接着分子、タンパク分解酵素、血管新生因子など、多くの分子が関係しています。
 その活動を遮断することで、がん細胞の増殖・転移を防ぐことができます。これを目的とした薬剤が分子標的治療薬です。研究の発展で、がんのメカニズムが明らかになるのにしたがい、新しい薬剤ができています。

おさえたいポイント

●血管新生阻害薬は分子標的治療薬の1つで、がん細胞の増殖・転移にかかわる因子に結合したり、その受容体に先回りして結合を阻害したりすることで、増殖・転移を阻害する。
高血圧のほか、心血管合併症(心血管毒性)にかかわる症状が副作用としてあるため、モニタリングをしっかり行うことが重要である。

血管新生阻害薬のしくみ

 血管新生阻害薬は、分子標的治療薬の一種です(表1)。がん細胞の増殖には栄養や酸素が必要となりますが、この供給を阻害して増殖を防ぐねらいで使用されます(図1)。

 血管内皮細胞増殖因子(VEGF)や血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)に対する抗体薬と、VEGFR、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来細胞増殖因子受容体(PDGFR)などのキナーゼ活性を阻害するマルチキナーゼ阻害薬に大別され、10種類以上の薬剤が多様ながん種に用いられています。

表1 血管新生阻害薬と代表的な副作用

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