本が大好きな看護師のおともさんが、“あなた”に寄り添った本を紹介するブックセラピー企画。看護師さんのさまざまなお悩みに合わせて、相談者にぴったりな書籍を教えてくれます。
看護師のおともかんごしのおとも
救急外来部門・シミュレーションセンターで主任を務める看護師。実家も今の家も、本だけで丸々1部屋を使ってしまっているほどの本好き。@99emergencycall
看護学生のEさん
国家試験の自己採点を終え、卒業式を間近に控えたころ。急性期病棟への配属を希望しているものの、まだ配属先は決定していません。先輩から「入職後の勉強が大変」という話を聞き、期待と不安が入り混じる日々。入職までの約1か月をどう過ごせばいいのでしょうか。
医療者として、社会人として身につけたい「考える力」
白石 国家試験を終えて卒業間近の看護学生さん、新人看護師さん向けの本を選んでいただきたいです。この約1か月という期間、どう時間を使うか悩ましいところですね。
看護師のおとも
ちょっと待っていてくださいね。(部屋の本棚をガサゴソ)熱心なタイプの方は、自分から進んで研修に参加したりと、あれこれ勉強すると思うんです。でも、配属先も決まっていない段階でなにを勉強したらいいのか迷うことも多いはず。そんなときはあまり難しく考えると大変になってしまうので……。そこで今回は、まず『考えることは力になる』をご紹介したいと思います。
考えることは力になる
岩田健太郎 著
照林社
四六判
1,430円(税込)
白石 あ、岩田健太郎先生の本ですね。
看護師のおとも
もともと、雑誌『エキスパートナース』で2015年から連載されていた内容とコロナ禍での内容を盛り込んで再構成した本です。特徴的なのは、医療者として必要な「考える力」をさまざまな角度から解説している点。例えば、議論の進め方や、使ってはいけない言葉、相手にわかってもらうためのコミュニケーション技術など、実践的な内容が含まれています。また、近年重要性を増している英語の学習法や、とんでも情報に惑わされない方法についても触れています。
演繹法や帰納法、アブダクションと仮説生成など、少し難しい内容もありますが、臨床での思考プロセスを理解するうえで重要な考え方が詰まっています。配属前に、こうした基本的な「考える技術」を学んでおくことは非常に有意義だと思います。
白石 岩田先生の連載は、やわらかい言葉で書かれていながらも、ときに鋭い視点が炸裂というか、岩田先生ならではの突き抜けたロジックも読んでいて面白いなと感じます。
看護師のおとも
そうですよね。基本的に「ですます調」で書かれていて、論文のような硬い文体ではないし、内容が難しすぎることもないので読みやすい本だと思います。病院のオリエンテーションでは扱わないような、社会人としての基礎力、素養を伸ばすのに適していますね。
看護師に広がっている可能性を知るために
Letters~今を生きる「看護」の話を聞こう~
白石 弓夏 著
メディカ出版
A5判
1,980 円(税込)
白石 おぉ、まさかのここで!
看護師のおとも
僕としては、入職前にぜひ読んでおいてほしい本なんです。というのも、多くの看護師志望者は中学生や高校生の頃から目標を定めて、そのまま看護の世界に入っていきます。他の世界をあまり知らないまま看護師になるわけです。働き始めて心が折れそうになったとき、「他の生き方を知らない」というのはとてもつらいこと。看護師の資格を持つ人には、どんな可能性が広がっているのか。そういった視野を早い段階でもっておくことは、とても大切だと思います。
白石 ありがとうございます。たしかに取材・執筆しているときは、若手~中堅看護師さん向けを意識していたのですが、発売後には意外と看護学校の入学や、入職祝いとして贈りたい・贈られたという感想もいただいたんです。
看護師のおとも
それは初耳でした!
この2冊を組み合わせれば、医療者としての「考える力」という土台をつくりながら、看護師としての可能性の広がりも知ることができます。入職前のこの時期に、技術や知識の勉強だけでなく、自分の将来を広い視野で考えておくことは、心が折れないためにも意味があると思います。
今回、看護師のおともさんが紹介してくれた本
日々、患者さんに寄り添うあなたにも、やさしく寄り添うものがあってほしい。今回紹介した本たちが、そんなあなたの心の“おとも”になれることを願っています。
看護師のおともさんに、「悩みに合う本を教えてほしい」という方を募集中。
下記URLよりご応募ください。
※掲載の有無はエキスパートナース編集部で判断し、掲載有無の結果は事前にご連絡はいたしません。
【第4回】「文字ばかりの本は苦手」そんな中堅ナースのためのビジュアルで学ぶ看護書(1月18日配信予定)
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