11月に発売された『看護記録を整える』は、看護記録について、「何をどのように見直し、改善を図るか」「誰が、どのように、何の作業をするか」を具体的にまとめた1冊。「記録委員になったけれど何をすればいいのかわからない」「管理者として記録を効率化したいけれど、何からとりかかればいいかわからない」「記録に関するスタッフ教育がうまくいかない」といった悩みを抱える方におすすめです。

 今回は特別に、試し読み記事を公開!「ココがポイント!看護記録の監査や教育」をお届けします。

看護記録を「整える」前に
DX推進によって、看護記録はどう変わる?

看護記録の監査とは

Point①看護記録の監査は、漫然と実施しても意味がない

 看護記録の監査は、医療機関における品質管理と患者ケアの向上に不可欠な過程です。この重要な作業は、看護記録の正確性、完全性、適時性を評価し、法的および専門的基準への遵守を確認することを目的としています。
 監査プロセスでは、記録の内容、形式、一貫性を詳細にチェックします。具体的には、患者の状態、実施された看護介入、その結果などが適切に記録されているかを確認します。
 また、医療用語が正確に使用されているか、記録の読みやすさ、日付や署名の漏れがないかなども重要な確認事項です。

適切な監査が、業務効率化・看護の質向上につながる

 定期的な監査を通じて、看護スタッフの記録スキルの向上、ケアの質の改善、リスク管理の強化が図られます。さらに、監査結果は教育や研修に活用され、組織全体の看護実践の向上につながります。
 看護記録の監査は単なる形式的な作業ではなく、患者安全の確保、医療の質の向上、そして看護専門職としての責任を果たすための重要な取り組みです。適切な監査システムの構築と実施は、医療機関の信頼性と効率性を高めるうえで欠かせません。

Point②看護記録の監査も、「量(形式)」と「質」の両面を評価する

 看護記録の監査とは、看護の質向上を目的に、設定した項目や評価基準に沿って、看護記録が記載されているか確認することです。看護記録の監査は、看護記録基準(→本書p.12)の理解を深め、“ 書きたいことを書くのではなく、書かねばならないことを書く ” ことのできる看護師の育成に寄与します。

 監査には、看護記録の適切性をみる形式監査(→本書p.72)と看護の妥当性をみる質監査(→本書p.80)があります(表1)。
 看護の質向上のためには、形式どおりに正しく記録されているかを見るだけでは不十分です。記録の内容、つまり、行われた看護が患者にとって最適であったのか、質監査で振り返ることが必要です。

表1 看護記録の形式監査と質監査

Point③帳票や諸記録の監査は、できるだけ多職種で行う

 多くの施設では、定期的に診療録(カルテ)監査が行われていると思います。カルテは、患者の「診療の一連の過程を記録するもの」でもありますが、診療報酬請求のための根拠ともなります。そのため、入力漏れの有無や記載内容の精度を監査によって確認し、各部門にフィードバックしていくことが必要となります。

Check

診療録の監査は、形式監査(量的監査)は情報管理部門・事務職が、質監査は多職種によるピアレビューの形式で行われることが多いとされています。

〈ちょっと詳しく〉監査の項目は、どう選定したらいい?

 形式監査の項目を決める際には、看護記録基準に沿って記録ができていない部分、病院機能評価や保
健局などの立入検査などで指摘を受けた内容を取り入れることをお勧めします。なぜなら、これらの項
目は、施設の「弱いところ」と考えられるからです。

 ただし、項目が多すぎてもいけません。多くの患者のカルテを監査するためには、施設の弱いところ
を中心に、ある程度項目を絞って設定するとよいでしょう。監査の結果、弱みとなっている記録の記載
率が高くなったら、その項目から違う項目へ変更し、看護記録のさらなる改善を図ります。

(天野典子、村岡修子)