川嶋みどり 看護の羅針盤 第51回

　20世紀半ばから現在に至るまで、看護は多くの変化と困難を乗り越えてきました。その中で「書く」という営みを通じて、看護実践の価値を問い続けた川嶋みどり先生が、これまでの経験と想いを綴った言葉を厳選し、一冊の本にまとめたのが『川嶋みどり看護の羅針盤 366の言葉』 （ライフサポート社、2020年）。　

　この連載では、本書に収載された看護の現場や看護職の想いだけでなく、個人としての視点や感性も込められた366の言葉を、毎日1つずつご紹介します。

そのほか「川嶋みどり 看護の羅針盤」の記事はこちら

　私たち看護師は、人間の胎生期から生命の誕生、そして病、老、死などの人生のできごとのうちでもとりわけ大きな出来事に直接かかわる職業である。日々自己の生命観を問われ続けて葛藤しているといっても過言ではない。

　看護師にとっては、生の問題も死の問題も、観念の世界で論じているゆとりはない。いつでも、現実の具体的な場面で実践的な課題として対応せざるを得ないのだ。

　そうはいうものの、看護師も人間であり、社会的な諸制約や価値基準にそって生きている存在である。対象の人々の多様な生死にまつわる苦悩に直面し、絶えず惑い、悩み、自己の生死観は揺れ動き続くと思われる。

（出典：『いま、病院看護を問う 看護の時代１』8ページ、勁草書房）