これだけは気をつけたい看護ケアのポイントを取り上げます。今回は、蒸留水を単独で静脈内に投与してはいけない理由を解説。等張液、高張液、低張液の違いについてもおさえておきましょう。

「やったら危ない!看護ケア」の連載まとめはこちら

蒸留水は中心静脈や末梢静脈に投与してはいけない!

例えばこんな場合…

〈事例1〉「溶解」と「希釈」の意味を取り違え
●蒸留水で溶解する薬剤を投与する際、薬剤を蒸留水で「希釈」して投与

〈事例2〉剤形による思い込み
●ゴム栓で針を刺す場所もあったため、蒸留水を生理食塩液と間違えて投与

赤血球が破壊され、黄疸や貧血、腎障害等になる可能性がある

 蒸留水を単独で静脈内注射すると、赤血球内に水が充満し、赤血球の膜が破壊(溶血)されます。その結果、黄疸貧血腎障害などを引き起こす可能性があります。

蒸留水は浸透圧が体液より低く、細胞内に水が流れて溶血が起こる

 生体内の浸透圧は細胞内外で等しくなるように調節されています。これは生体が状態を一定に保とうとするはたらき、すなわちホメオスタシス(恒常性)のはたらきによるものです。血漿とほぼ等しい浸透圧をもつ液体等張液といい、これより低い浸透圧の液体低張液高い浸透圧の液体高張液と呼びます。
 輸液もこの3種類に分類され(図1)、体液と輸液の浸透圧差によって輸液は体内に分布していきます。このとき、水は浸透圧の低いほうから高いほうへ移動していくことを頭に入れておきましょう。

図1 輸液における等張液・高張液・低張液の違い

輸液における等張液・高張液・低張液の違い

 等張液には、「生理食塩液」や「乳酸リンゲル液」「5%ブドウ糖液」などがあります。例えば生理食塩液を投与した場合、浸透圧が体液とほぼ等しいので、細胞外への水の移動は起こりません。
 高張液には、「10%塩化ナトリウム液」や「20%ブドウ糖液」などが挙げられます。これを投与すると浸透圧が体液より高いため、細胞内から細胞外へ水が流出します。

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