がん終末期における褥瘡ケアでは、体位変換を必ずしも積極的に行うとは限りません。終末期ステージに合わせた褥瘡ケアや、マットレス選定の考え方を解説します。
「がん終末期ケアの“やってはいけない”」の連載まとめはこちら
体位変換を積極的に行うとは限らない
〈理由〉終末期のさまざまな症状を抱えるなか、体位変換が苦痛になってしまうことがあるから
 一般的に、体位変換等の除圧・減圧のための行為を含む予防ケアは、褥瘡ケアにおいて有用とされています。
 しかし緩和ケアにおいては、その患者さんの状態や病期の時期により、褥瘡予防ケアが必須で有益となるとは限りません。なぜなら、エンドオブライフ期(以下、終末期とする)には表1に示すような症状がみられ、また病態が変化しやすく、さまざまな苦痛が出現すると言われているからです。
苦痛があるなか、褥瘡予防の優先度がどのくらいなのか、ケアのうちどの程度の割合を占めるのか考えなくてはなりません。
褥瘡予防や苦痛症状などのリスクアセスメントを行う
 では、どのように判断するとよいのでしょうか。まずは、リスクアセスメントです。
 通常の褥瘡予防のためのリスクアセスメントだけでなく、表1の症状のほか、がん悪液質症候群に伴う皮膚の脆弱化、化学療法や放射線療法に伴う皮膚変化、精神的・社会的苦痛やスピリチュアルな苦痛をアセスメントする必要があります。
「Waterlow(ウォータールー)スケール」(文献4参照)は体型や可動性、がん悪液質や多臓器不全、貧血などの項目で構成されており、具体的であるため参考にするとよいでしょう。
表1 エンドオブライフ期患者の苦痛症状(例)
病気そのものによる症状
●がんの転移や浸潤、腫瘍の増大による痛み
●骨転移による腰痛や背部痛
●脳転移による頭痛
●骨盤内再発や腫瘍増大による内臓痛
●神経の圧迫による痺れや痛み
●体性痛
●心因性の痛み
がんの進行などに関連した諸症状
●呼吸困難感
●腹部膨満感
●全身倦怠感
●吐き気
●浮腫
●黄疸・掻痒感
●下痢・下血
●腹水貯留
●骨突出とたるみ
●不安、悲しみ、悲嘆、抑うつ、寂しさ、不眠
終末期患者さんの褥瘡予防においては、苦痛を除去することが大前提となり、症状コントロールを優先させます。そのうえで、褥瘡の発生要因となるリスクを取り除くケア介入をします。
ただし、病状の進行により症状に変化が起きれば、すべての発生要因を取り除くことができないかもしれません。また、私たちがよかれと思って行っているケアが苦痛なこともあるので、よく配慮する必要があります。
繰り返しになりますが、終末期の褥瘡予防の目標は、緩和ケアを前提とし、苦痛を与えるケアであってはなりません。褥瘡の発生や悪化によって患者さんのQOLが低下しないような目標設定が望ましいといわれています。つまり終末期における褥瘡ケアでは、「褥瘡を予防する」「褥瘡が治癒する」だけが目標ではなく、「褥瘡が悪化しない」「処置に伴う苦痛がない」などの目標設定がなされます。
終末期ステージに合わせた褥瘡ケアとは?
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