腎臓病を学ぶうえで重要な「水・電解質」について紹介!腎臓の役割や、水・電解質異常とはどのような状態なのかをわかりやすく解説します。
※この記事は『エキスパートナース』2025年8月臨時増刊号「ナースがベッドサイドで必要な病態生理が身につく 腎臓病と透析の集中講座」の内容を抜粋したものです。
腎臓の役割とは?
腎臓のはたらきはたくさんありますが、整理すると図1の4つが挙げられます。

「水・電解質の調整」では、水や電解質(塩)を摂取すると(IN)、摂取したぶんの水や電解質を体外に出す(OUT)ことによって、身体を一定の状態に保ちます。これを恒常性(ホメオスタシス)と呼びます。水や電解質(塩)をたくさんとったらたくさん排泄しますし、摂取が少なければ水や電解質を腎臓で再吸収して、尿を少なく(濃く)することで正常の範囲に近づけます。
私は腎臓内科が専門ですが、普段オーダーしている補液はおおざっぱです。これは、腎臓が正常に機能する状態であれば、だいたいの方向性が合った補液をしておけば、「腎臓にお任せ」しても、腎臓が水・電解質を調整してよい塩梅(あんばい)にしてくれることを知っているからです(後、だいたいの場合は計算どおりにはいかず、微調整する必要があるので、細かく決めすぎません)。
電解質異常で大切なことは?
さて前述のことから、電解質異常で最も大事なことは何かをお伝えすると、狂っている血清の電解質と尿の電解質をセットでとる、です。「腎臓がどのようにはたらいているか?」のイメージをもつことは非常に重要です。
身体のなかにたくさんあるから排泄する、少ないから吸収する、というのが大前提です。
例えば高カリウム(K)血症では、「腎臓は最大量でKを排泄しているのに、出し切れなくて高K血症になる」ということがほとんどです。高カルシウム(Ca)血症、高リン(P)血症も高K血症と同じように作用が起きた、という分類になります。
ナトリウム(Na)は、濃度を一定にする身体のはたらきが強いために、「真水の排泄量をコントロールしている」というのが身体の原則になります。これがNaのすべてですが、このひと言だけで、わからなくても大丈夫です。これから前提となる体液量の説明を進めていきましょう。
水・電解質異常になりやすい患者は?
しかし、このように腎臓がベストを尽くしても、病的な状態(水・電解質異常)になることがあります。特に、以下のような人は注意が必要です。
●ICU、HCUでの治療が必要な全身状態
●手術後(大きな手術であればあるほど)
●頭蓋内疾患(脳出血、くも膜下出血、髄膜炎など)
●心不全
●慢性腎臓病
●精神疾患(心因性多飲や食指不振、薬剤など)
水の異常とは?
水の異常として、脱水・溢水(いっすい)が挙げられます。
脱水では、漂流・遭難などで十分に水分をとれない状態などもありますし、嘔吐や下痢で外に出ていくぶんが増える状態が想定されます。熱傷なども皮膚バリアが壊れてしまい、どんどん体液が外に出ていく状態ととらえられます。このように、正常範囲よりも体液量が減った状態が脱水です(図2-①)。逆のパターンとして、過剰な補液や、塩分摂取過多の状態で尿が十分に出ない、という状況であれば、身体の中にどんどん水がたまっていき、体液量が過剰になります。これが溢水です(図2-②)。

ここでおさえてほしいことは、腎臓がめいっぱいはたらいても、脱水や溢水が補正されない状態が「病的である」、ということです。脱水であれば「脱水→腎臓で水を再吸収→尿量が減る」というのは正常な病態であり、心不全であれば「心不全による溢水→腎臓に影響して尿を十分につくれない→尿量が減る」という病的な病態になります。
皆さんが見ている「尿量が少ない」という現象が、
●脱水による腎臓の生理的なはたらき
●心不全に伴う腎機能障害などとしての病的な状態
●尿道カテーテルの物理的な閉塞
などのどれであるかを見きわめることが大事です。
電解質の異常とは?
水の異常に加えて、電解質の問題が出てきます。
体液量は「身体における水分の量」であり、電解質は「水分における塩分の割合」です。わかりやすくうどんに例えると、図3のようになります。
水・電解質が苦手な人の傾向として、この2つがこんがらがっていることが多いです。つまり、「うどんの大盛りは味が薄い」「うどんの小盛りは味が濃い」という感じで考えてしまっているのですが、こんな話はおかしいですよね?
そのため、体液量の状態と電解質を別個に考えることが大事になってきます。体液量のキープレイヤーはナトリウム(Na)です。そのため、体液量とNa濃度を別個におさえましょう。

\続きは誌面で/

エキスパートナース2025年8月臨時増刊号
ナースがベッドサイドで必要な病態生理が身につく 腎臓病と透析の集中講座
長澤 将 著
B5・164ページ
定価:1,980円(税込)
照林社
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