入院患者で見抜きたい脳卒中の徴候と、急変を防ぐためのポイントは?早期発見・対処や予防・予測のコツをわかりやすく解説します。

起こりがちな急変徴候

●意識障害
●血圧上昇
●上下肢麻痺
●しびれ
⇒進展すると生命を脅かす脳卒中を疑おう!

 脳卒中には、虚血性脳卒中と出血性脳卒中があります(表1)。
 虚血性脳卒中は脳の血管に血栓ができ脳梗塞になることです。脳梗塞の分類は、①ラクナ梗塞、②アテローム血栓性梗塞、③心原性脳塞栓、④その他に分類されています。
 出血性脳卒中には⑤脳内出血と⑥くも膜下出血があります。

表1 脳卒中の分類

虚血性脳卒中
①ラクナ梗塞
特徴
・15mm未満の小さな梗塞
・ 片側顔面下部と同側の上下肢麻痺、しびれ、巧緻(こうち)運動障害、呂律(ろれつ)不良などが現れる
発症時の特徴
・大きな発作はなく、徐々に進行する
・無症候性の場合もある
誘因
・高血圧
糖尿病

②アテローム血栓性梗塞
特徴
・徐々にアテロームが成長し、血流障害を起こす
・側副血行路が発達すれば、壊死範囲は大きくならない傾向がある
発症時の特徴
・比較的朝方に発見されることが多い(夜間睡眠中に血液粘度が高いため)
・一過性脳虚血発作(TIA)を起こすことがある
誘因
・喫煙 ・肥満 ・糖尿病
・高血圧 ・高脂血症

③心原性脳塞栓
特徴
・不整脈で心臓内に血栓ができ、それが剥がれて脳塞栓になる
・太い血管を塞栓すれば重篤になる
発症時の特徴
・突然に発症する
誘因
・心房細動 ・人工弁(機械弁)
・洞機能不全症候群
・感染性心内膜炎

④その他(血行力学性)
特徴
・脳の栄養血管にもともと細いところがあると起こりやすい
誘因
・過度な脱水
・血圧低下

出血性脳卒中
⑤脳内出血
特徴
・高血圧性脳出血では、被殻・視床・橋・小脳などに多く出現
発症時の特徴
・発症時間は午前中が多い
誘因
・高血圧 ・血管炎
・脳血管奇形 ・白血病

⑥くも膜下出血
特徴
・脳動脈瘤が破裂することにより、くも膜下出血を起こす
・突然の激しい頭痛、嘔吐などがみられる
発症時の特徴
・突然に発症する
誘因
・高血圧 ・喫煙
・家族歴

脳卒中の原因とは?

 意識は「覚醒」と「認知」の2つの要素で成立します。そして以下が障害されることにより、意識障害が出現します。

●覚醒機能の維持をする上行網様体賦活系
●睡眠・覚醒のリズムをつくる視床下部賦活系
●感覚刺激から認知機能を形成する大脳皮質

 バイタルサインの異常はさまざまな原因で起こりますが、特に延髄には生命維持に不可欠な循環・呼吸中枢が、視床には体温中枢があります。
 また頭蓋内圧が亢進すると、自動調整能がはたらいて脳灌流を保とうと血圧が上昇し、特徴的なクッシング徴候(徐脈など)が出現します。

 大脳皮質から脊髄に下行する運動経路で延髄の錐体を通るものを錐体路といいます。この経路が障害されると運動麻痺として現れます。
 これらのくわしい観察事項を次に示します。

脳卒中の早期発見・対処のポイントは?

①意識障害をアセスメントする

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