生成AIを使いこなすには、質の高いプロンプト作成が重要です。看護記録をSOAP形式にまとめる具体例も紹介する、書籍『ChatGPT使ってる?ナースが書いた 看護に役立つ生成AI使いこなし術』の試し読み記事をお届けします。
AIを優秀なアシスタントにする「質問力とプロンプト」
これまでの章で、私たちは生成AIという新しい技術について、その基本的なしくみ(第1回の記事・書籍CHAPTER1)、驚くべき能力と無視できない限界(第2回の記事・書籍CHAPTER2)、看護現場での具体的な活用可能性(第3回の記事・書籍CHAPTER3)と、多角的に学んできました。まるで、新しい職場にやってきた、非常に有能だけれども、少しクセのある(?)新人同僚について、その性格や能力、そして接するうえでの注意点をひととおり把握したような状態、といえるかもしれません。
知識や注意点を学んだうえで次に重要になるのは、「その新人同僚(=生成AI)と、実際にどうやってうまくコミュニケーションをとり、その能力を最大限に引き出して、最高の仕事仲間になってもらうか?」ということです。せっかく高いポテンシャルをもっているのに、指示の出し方やかかわり方が悪ければ、その能力を十分に発揮してもらえず、宝の持ち腐れになってしまいます。
この章では、まさにその「生成AIとの上手なコミュニケーション術」に焦点を当てます。そして、そのコミュニケーションの鍵を握るのが、「プロンプト(prompt)」と呼ばれるもの、そして、そのプロンプトを使いこなすための「質問力」なのです。
プロンプトとは何か
「プロンプト」という言葉は最近よく耳にするようになった、という人もいるかもしれませんが、難しく考える必要はありません。プロンプトとは、私たちが生成AIに対して与える「指示」「質問」「命令」「お願い」のことです。AIに何か文章を書いてほしいときに入力する文章、何かを尋ねるときの質問文、画像を作ってほしいときの説明文など、これらすべてがプロンプトにあたります。
それでは、なぜこの「プロンプト」が、AIと上手に付き合ううえで、それほど重要なのでしょうか?
それは、生成AIが私たちの与えたプロンプトの内容を唯一の手がかりとして、回答を生成するからです。AIは、人間のように“空気を読む”とか、“言外の意図を察する”といったことはできません。あなたがプロンプトで伝えた言葉、そのものがすべてなのです。

これは、人間の同僚とのコミュニケーションに例えると、とてもわかりやすいかもしれません。 例えば、あなたが後輩の看護師に「〇〇さんの件、よろしくね」とだけ伝えたとします。これだけでは、後輩は何をどうすればよいのかわからず、困ってしまいます。結果として、期待どおりの仕事はしてもらえないかもしれません。
一方で、「〇〇さんの午後のバイタルサイン測定と、××の薬剤投与、そしてご家族への△△についての説明をお願いします。特に注意してほしいのは□□の点です」というように、具体的で明確な指示を出せば、後輩は迷うことなく、的確に業務を遂行してくれるはずです。
生成AIとの関係も、これとまったく同じなのです。あいまいで不十分なプロンプトを与えれば、AIから返ってくる答えも、やはりあいまいで的外れで、役に立たないものになりがちです。 反対に、明確かつ具体的で、必要な情報が十分に盛り込まれたプロンプトを与えることができれば、AIはその能力を最大限に発揮し、驚くほど的確で質の高い、そしてあなたの期待に沿った回答を返してくれる可能性が高まります。
よくコンピュータの世界でいわれる「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れたら、ゴミしか出てこない)」という原則は、まさにプロンプトにも当てはまります。質の低いプロンプトからは、質の低いアウトプットしか生まれないのです。
ですから、生成AIを使いこなすうえで最も重要なスキルの1つは、この「質の高いプロンプトを作成する能力」、言い換えれば「AIから望む答えを引き出すための、すぐれた質問力・指示力」を身につけることです。
プロンプトの違いが回答の質に差をつける
プロンプトの違いによって考えられることを具体例でみてみましょう。
プロンプトの違いによる比較(看護記録の一例)
【看護師の記録】
本日訪室時、「昨夜は創部痛が気になって、あまり眠れなかった」との訴えあり。表情も少し険しい。昨日定期で使った鎮痛薬はあまり効いていない様子。バイタルは血圧がやや高めだが、発熱はなし。食事も半分くらいしか進んでおらず、食欲もない様子。
昼前にナースコールがあり、「やっぱり痛みが強い」とのことだったので、医師に報告し、臨時で鎮痛薬を使用。その後、訪室すると少し落ち着かれたようだったが、夕方ご家族が帰られた後に、また「ズキズキする」と話されていた。創部のガーゼを確認したが、出血などは特に見られなかった。明日の日勤帯でもう一度、疼痛コントロールの方法を検討する必要があるかもしれない。


このように、プロンプトの質が、AIの回答の質を大きく左右するのです。これまでの私たちは、Google検索のように、単にキーワードをいくつか入力して、あとはAI(検索エンジン)がよい感じに関連情報を探してくれる、という使い方に慣れてきました。しかし、生成AIとの対話は、それとは少し異なります。検索キーワードを探すのではなく、「明確な指示書」や「依頼状」を作成するような意識、あるいは、優秀だけれど指示がないと動けない新人同僚に、的確な「ブリーフィング(事前説明)」を行うような意識をもつことが、上手に付き合うための第一歩となります。
「少し難しそう…」と感じましたか?
大丈夫です! すぐれたプロンプトを作成する能力は、決して一部の専門家だけがもつ特殊なスキルではありません。いくつかの基本的なコツを学び、少し練習すれば、誰でも上達できるものです。
次項(書籍参照)からは、その“魔法のコツ”ともいえる、効果的なプロンプトを作成するための具体的なテクニックについて、1つひとつ詳しくみていきます。「目的・役割・条件を明確に伝える」「対話を通じて精度を上げる」「AIの回答を吟味し編集する」そして「AIのクセを理解する」といったステップを通じて、あなたもきっと、AIを「最高の同僚」にするためのコミュニケーション術を身につけることができるはずです。
さあ、AIのもつ真の力を引き出すための「質問力(プロンプト力)」を磨く旅を、一緒に始めましょう!
●あいまいで不十分なプロンプトからは、あいまいで的外れで、役に立たない回答しか返ってこない。
●生成AIを使いこなすには、「質の高いプロンプトを作成するための能力」が最重要スキルとなる。
\続きは書籍で/

ChatGPT使ってる? ナースが書いた
看護に役立つ生成AI使いこなし術
上川重昭 著
A5・128ページ
定価:1,980円(税込)
照林社
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