特別な設備も不要で、日常ケアで取り入れやすい。患者さんの身体と心を支える、音楽を使った「新しい心臓リハビリテーション」を紹介します。

心理面に配慮した環境づくりが重要

 音楽は、患者さんに安心をもたらし、身体と心を自然な回復の方向へ導きます。この「身心安楽」の状態は、心臓リハビリテーション(以下、心リハ)の根幹となる概念です。

 近年、心リハでは身体機能の回復だけでなく、不安や意欲低下、せん妄など精神心理的側面への支援の重要性が強調されています。特に高齢患者では、身体的フレイルに加え、心理的フレイルがQO(quality of life:生活・生命の質)や生命予後の低下に関与するため、心理面に配慮した「心身の活性化」と「積極的リラクセーション」を促す環境づくりが重要です。
 当院では、こうした課題に対する包括的プログラムの一環として、音楽を活用した心リハを導入しています。

歌唱は意欲向上と呼吸筋・咽頭筋のトレーニングにつながる

 具体的には、モーツァルトなどのクラシック音楽、日本の唱歌、有名映画の楽曲など、患者さんの年代や嗜好に応じた音楽を選択し、個室のベッドサイドや心リハ室で活用しています。ベッドサイドで音楽を聴くだけでなく、歌唱や簡単な楽器演奏など、能動的な参加を促すことで、不安やストレスの軽減、せん妄予防、余暇時間の充実につなげています。

 特に歌唱は、高齢患者の記憶や情動と結びつきやすく、安心感をもたらし、自然な表情や発語の増加、リハビリ意欲の向上を促すことが多く認められました。また、歌唱は呼吸筋や咽頭筋のトレーニングにもなり、呼吸機能の維持・改善や誤嚥予防にも寄与することが期待されます。

「フレイル教室」では音楽動画や教材を用いてゆったりとした時間を提供

 心リハ室では、クラシック音楽をBGMとして流しながらストレッチや筋力トレーニングを行い、患者さんが安心して運動に取り組める環境を整えています。

 さらに、入院中のフレイル高齢患者を対象とした集団セッション「フレイル教室」では、音楽動画や教材を共有しながらゆったりとした時間を過ごすことで、患者どうしの交流が生まれ、離床時間の延長やリハビリ参加意欲の向上にもつながっています。

 音楽は特別な設備を必要とせず、看護師が日常ケアのなかでも容易に取り入れることができる有用な支援手段です。音楽を活用した心リハが全国に広がることで、多くの患者さんの回復と生活の質の向上に寄与することが期待されます。

入院中のフレイル高齢患者を対象とした集団セッション「フレイル教室」の様子。

心臓病看護教育と音楽芸術や文学による新しい心臓リハビリ ハート先生®プロジェクト
(一般社団法人 心臓病検診推進センター)
当院で活用している音楽動画・教材は、下記ホームページからご覧ください。
教材:自発共鳴型音楽療法、感動体験型音楽療法など多数  https://cardiac.jp/main/

※この記事は『エキスパートナース』2026年5月号の内容を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。