さまざまな人と接する機会の多いナースが、円滑な関係構築のためにできる“ちょっとした言葉選びの工夫”を紹介します。今回は、説明したはずのことを再度尋ねられた時の工夫です。

言葉には、直接的な意味以外のニュアンスがある
「先ほどもご説明したように」には、「きちんと話を聞いていないとダメです」という患者さんを非難するニュアンスを含んでいます。
「非難された」と感じた患者さんは、萎縮して、それ以上不明な点を尋ねることができなくなったり、看護師に反発してけんか腰になったりするかもしれません。
そのような状況を防ぐためには、自分の言葉がもつ“言外のニュアンス”を意識して会話をする必要があります。同様の否定的なニュアンスを含む言葉として、「なぜ◯◯したのですか(または、しなかったのですか)?」があります。患者さんの行動の理由を尋ねる際に“なぜ”を用いると、相手を責めるニュアンスを含んでしまいます。
この場合は、「~した(しなかった)理由をお聞かせいただけませんか?」などと言い換えるとよいでしょう。
患者さんの言葉にもある言外のニュアンス
自分の言葉だけではなく、もちろん患者さんの言葉にも言外のニュアンスがあります。
患者さんから「食事の時間は決まっているんですよね?」と再度聞かれた際、とっさに皆さんの頭に浮かぶのは「さっきの話を聞いてなかったの?」と怒りを伴う考えか、あるいは「決まった時間に食べたくない事情があるのかな?」と言外のニュアンスを推察しようとする考えのどちらに近いでしょうか。
皆さんが患者さんに対して「さっき話聞いてなかったの?」と直接的には伝えないように、患者さんも自分の本当に伝えたいことを、正確かつ直接的に言葉にしているとは限りません。
とっさに「さっき話聞いてなかったの?」と頭に浮かんできたとしても、患者さんが本当は何を伝えたかったのか推測して、その推測が合っているかを患者さんに確かめてみましょう。
看護師の推測は当たっていなくてもOK
「食事の時間は決まっているんですよね?」の言外にある “伝えたいこと” は、無数に考えられます。
「家族が帰宅するまでは食事をしたくない」「朝、起きられなくて、ご飯を食べられなかったらどうしよう」などです。
では、患者さんの「食事の時間は決まっているんですよね?」に対して、看護師が「ご家族が帰宅するまでは食事をせず、一緒にいたいとご希望でしょうか」と推測したことを患者さんに確かめてみたとします。
すると、「いや、急かされて食べるのは嫌なんだよね」と本当に伝えたかったことを答えてくれました。
この例のように、人には間違ったことを正したくなる「間違い指摘反射」という心理的反応があるため、看護師の推測は外れていてもかまわないのです。推測したことを確認するやり方ができれば、この反射により「じつは○○が心配なんです」など、本当に伝えたかったことを患者さんから自然に引き出すことができます。
ただ、患者さんの言葉の言外の意味がまったく想像できない場合は、上記の方法は使えません。こういった場合は、言外の意味を推測する力が身につくまで「何か気がかりなことがおありでしょうか?」と質問するのが適切でしょう。

この記事は『エキスパートナース』2022年4月号連載を再構成したものです。
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