せん妄のメカニズムを知れば、効果的な対応・ケアが見えてきます!今回はせん妄における見当識障害で生じることや、Reality orientation(現実見当識訓練)を踏まえたケアのしかた、注意の環境調整について解説します。
見当識障害で生じること
見当識障害が生じると、せん妄患者は自分の状況がわからず不安になり、不合理な帰宅欲求、イライラ、拒否などがしばしばみられます。
自宅と間違えて転倒する例は、周囲の状況がわからないという見当識障害と、周囲に気を配れないという注意力障害などによるものであると考えられています。
ケアのしかた
Reality orientationを踏まえたケア
見当識障害への対策としては現状、場所などを繰り返し伝えて誤認と関連する問題行動などを改善する「Reality orientation(現実見当識訓練)」が広く知られています。Reality orientationはアルツハイマー型認知症で効果が認められ、せん妄対策のプログラム(第18回参照)でも採用されている介入方法です。
例えば、大きな時計やカレンダーを設置したり、ホワイトボードに日付・スケジュールを記載するなどの工夫は、見当識の補助になります。
しかし、注意力が落ちているせん妄患者では、壁や遠くにあるものに注意・関心が向くとは限りません。座位、臥位など、患者さんがよくとる姿勢で視界に入る位置に配置するなどの配慮も必要です。また、適切な眼鏡をかけてもらわないと、せっかくの工夫が台なしになることもあります。
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