おさえておきたいこと

オンライン診療の概要
●オンライン診療とは、 患者と医師が直接対面しない状態の診療
●医師と医師の間や、 訪問看護師を介したものなど、いくつかの種類がある
●新型コロナウイルス感染症による時限的・特例的な条件の緩和で、 オンライン診療を行う医療機関が大きく増加した

日本におけるオンライン診療の歴史:COVID-19により、 普及が一気に加速

 オンライン診療とは、患者さんと医師が直接対面せずに遠隔(離れている状態)で行われる診療です。1997年に厚生省(現:厚生労働省)は、離島や僻地を対象とする「遠隔診療」を認め1、医師どうしの画像診断や、通院が非常に困難な場合に電話やテレビ電話を用いて行う診療が少しずつ開始されました(図1-①1-3

 その後、社会にスマートフォンが普及し、さまざまな分野でのIT化が進んだことを背景に、2015年8月、厚生労働省は「遠隔診療は離島・僻地に限らない」という事務連絡を発出しました2。これが、実質的なオンライン診療の解禁通達となりました(図1-②1-3

 これを受けて2016年から、オンライン診療専用のシステムが開発されるなどして、都市部・過疎地を問わずにオンライン診療に取り組む医療機関が少しずつ出てきました。

 2018年3月には厚生労働省から、『オンライン診療の適切な実施に関する指針』3が発出されました(図1-③1-3
 このなかでオンライン診療とは、「遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」と定義されました。

 同年4月より、診療報酬として「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」が保険収載されました。

 保険点数の算定要件はその後、2020年4月にさらに修正されています(なお、「オンライン医学管理料」は廃止され、「特定疾患療養管理料〈情報通信機器を用いた場合〉」に変更)。

 そして2020年4月10日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に際して、厚生労働省より「電話や情報通信機器を用いた診療」に対する条件づけの大きな緩和(時限的・特例的措置)が行われ4、オンライン診療は一気にその普及が加速しました。

図1 「遠隔診療」から「オンライン診療」への移行の歴史
(文献1-3を参考に作成)

医師法20条
「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない」として、無診療の治療行為を禁止したもの。

「医師と医師」「医師と患者」など、 用いられる場面が複数ある

 オンライン診療が行われる場面は図2に示したように、「D to D」「D to P」「D to P with D」「D to P with N」などいくつかあります。

 「D to D」(図2-①)では、難易度の高い手術など高度の専門性を要する手技について遠隔から専門医が執刀医を指導したり、ICUにおいて専門医のアドバイスを受けるなども行われています。また、「D to P with N」(図2-④)では、介護施設などから医師にビデオ通話をつないで患者さんの様子を見てもらうこともあります。

図2 オンライン診療が行われる場面

現状では、 外来診療と在宅医療が中心

 このように、我が国の現状は、外来診療と在宅診療とがオンライン診療の主たる場面となっています。しかし、双方ともに、オンライン診療の保険点数が低く抑えられているために、便利であるとわかっていてもなかなか踏み切れない場合が多かったのは事実です。

 それを転換させたのが、新型コロナウイルス感染症による時限的・特例的な条件の緩和です。それまでオンライン診療が可能な疾患は厳しく定められていましたが、特例としてその疾患制限はなくなりました。
 
 また、初診から電話やオンラインで診療を行ってよいという、行きすぎとも思える規制緩和が行われて、2020年4月以降、全国で電話やオンライン診療を取り扱っている医療機関は16,000あまりを数えるようになりました。そのうちの約4割が自由診療、約6割が保険診療です。

 病院等でのオンライン診療は、現状では、セカンドオピニオン外来(自由診療)や研究として行われているものが中心です。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大のなかで、院内で従来の回診に替えて、病室と医師と看護師とをビデオ通話でつないで行う診察も始められています。

1.厚生労働省:健政発第1075号 平成9年12月24日 情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について.
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/johoka/dl/tushinki01.pdf
2.厚生労働省:事務連絡 平成27年8月10日 情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について.
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000094452.pdf
3.厚生労働省:オンライン診療の適切な実施に関する指針 平成30年3月.
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000901835.pdf
4.厚生労働省:事務連絡 令和2年4月10日 新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて.
https://www.mhlw.go.jp/content/000621247.pdf
(上記はすべて2024.7.18アクセス)

オンライン診療ってどんな場面でどう行われているの?②診療の流れと位置づけ(9月23日配信予定)

この記事は『エキスパートナース』2020年12月号の記事を再構成したものです。
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