医療事故につながる可能性のある危険な薬に注意!今回はハイリスク薬の1つである抗凝固薬を取り上げます。出血や脳梗塞のリスクを防ぐためのに知っておきたい、術前休薬期間など注意点を紹介します。
抗凝固薬は正しく服用・中止しないと、出血や脳梗塞に
危険な理由:血液凝固作用により、出血を起こしやすくなる
抗凝固薬は血栓の予防のために用いられます。投与中は、出血の副作用が現れることがあります。また、正しく服用しないと脳梗塞などの発症リスクを高めます。
2017年に、肝性脳症治療薬であるリフキシマ®(一般名:リファキシミン)を投与すべきところ抗凝固薬のリクシアナ®(一般名:エドキサバントシル酸塩水和物)を取り違えて投与したため、リクシアナ®の副作用と考えられる消化管出血が引き起こされ、出血性ショックで死に至った事例が報告されています。
注意するポイント:新規経口抗凝固薬に気づき、術前の休薬期間も確認する
1)従来のワルファリンに加え、新規経口抗凝固薬を知っておく
前述の事例は、薬剤師が調剤する際に類似した名称の他薬と取り違えたことが原因ですが、投与した看護師が気づかなかったことも原因の1つとして指摘されています。もし、手に取った薬剤がハイリスク薬である抗凝固薬であると気づけていれば、この事故は防げていたかもしれません。
抗凝固薬には、従来用いられてきたワルファリンと、最近登場した新規経口抗凝固薬があります。
①ワルファリン
古くから使われているワルファリン(ワーファリン)は、非常に有名な抗凝固薬です。納豆などのビタミンKを多く含む食品が禁忌であることや血液検査によるPT-INR値の定期的なチェックが必要であることなど、具体的な使用上の注意点を知っている方も多いと思います。
②新規経口抗凝固薬
2011年にダビガトラン(プラザキサ®)が発売されたのを皮切りに、新しい抗凝固薬が多く登場しています(表1)。これらは当初、新規経口抗凝固薬(NOAC)と呼ばれていましたが、現在はその作用のしかたから、直接経口抗凝固薬(DOAC)という名称への変更が学会より提唱されています。
DOACは古くから使われているワルファリンと同様に、脳梗塞や外科手術後における血栓予防に使用されますが、注射薬のヘパリン、フォンダパリヌクスナトリウム(アリクストラ®)やエノキサパリンナトリウム(クレキサン®)と同様に、下肢整形外科手術施行患者さんの静脈血栓塞栓症の予防を目的とした抗凝固療法にも使用されています。
したがって、抗凝固薬の使用頻度は以前よりも格段に増加しました。DOACはまだ歴史が浅いことや種類も多いことから気づきにくいかもしれませんが、ハイリスク薬であることに変わりありませんから、ぜひ覚えておきたい薬剤です。
表1 直接経口抗凝固薬と術前休薬期間
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