各職種に対してナースが「ココが知りたい!」と思うこと、そして各職種が「ココは私に聞いて!」と思うことを聞いてみました。今回は、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)のリハビリテーションスタッフ(リハスタッフ)チームに登場してもらいました。

看護師からのPT・OT・STへの質問①

 PT、OT、STにどんなときに介入してもらえばよいのかどういうことを相談するとよいのか曖昧です。丸投げになってしまったり、うまく相談できなかったりします。

たみお

たみお

理学療法士(PT)、11年目。「運動の先生」と他職種からは言われることが多いが、深掘りしていくとマッサージのイメージも強いことがあり、説明に疲れてきている。

生活に必要な動作のことなら任せてください

 PTは、患者さんに基本的な動作を獲得してもらうためにリハビリを行っています。「起き上がれない」「座れない」「歩けない」など、患者さんの基本的な身辺動作で困ったときは声をかけてみてほしいです。
 かといって、「基本動作をクリアできればPTは必要ない!」というわけではありません。患者さんが家で生活するために必要なADLやQOLにも着目しながら、必要なリハビリを行っています。「お風呂に入れるか」「トイレは使えそうか」など、生活に必要な動きに関して考えることができるので、気軽に相談してください。

大平

おおひら

理学療法士、6年目。よく、「移乗を手伝って」と言われがちなため、力仕事専門と勘違いされていないか心配している。看護師と連携して患者さんがハッピーになった経験があり、もっと連携できないか思案中。

「歩けるかな? 難しいかな?」そんなギモンはご相談を!

 PTはADL動作の専門家で、特に人の歩き方に詳しい職種となります。そのため、「この人、そろそろ車椅子を外して歩行器いけるんじゃないかな?」と思ったときや、「この人は歩ける(もしくは自分で動ける)んだけど、いつか転倒しそうで怖い……」と思う患者さんの相談をしてほしいです。
 歩行を自立にするタイミングは、PTとしては病気の特性や患者さん自身の身体機能の経過を見て判断しており、他職種から気にかけてもらえると内心とてもありがたいです。
 他にも、転倒対策に関しては身体機能と道具の相性を加味して提案できるので、ぜひPTまでお声かけください。

えだな

えだな

作業療法士、6年目(と、途中から始めた漫画家は2年目)。「えっ、OTさんなんですか? てっきり……」となぜかOT以外の他職種に間違えられることが多い。最近、漫画を描いていることが同僚に漏れており、「今度サイン書いてね」と言われ窮地に立っている。

患者さんと医療者、双方のQOLを高く保ちます

 「ここぞOTの出番!」という点は、ADL介助の場面で「もっとやりやすい方法がないかな?」と困ったときです。
 例えば、寝たきりの患者さんの着替えの場面。1人で全介助の患者さんの寝返りを行って袖を通し、服を引っ張って身体の位置をベッドの頭側に寄せると、背中の服が上にずれてしまいます。これを直すのは、なかなか難しいです。
 だけど、そんなときはビニール袋を使って、袋の中に自分の手を入れて、患者さんの背中とベッドの間に差し込むと、摩擦が軽減されてとても介助がしやすくなるんです。このように、患者さんはもちろん、働いている私たちにとってもQOLを高く保って生活できる方法を、さまざまな視点から考えることが得意なのがOTです。

すま

すま

作業療法士(OT)、12年目。若かりしころは看護師に作業療法の魅力を伝えようと奮闘して、空回りしていた黒歴史をもつ。最近は、その魅力は背中で語ることにしている。

応用動作のプロ!退院支援時のリハビリも得意です

 PTとOTが同時に介入しているときは、お互いの役割がオーバーラップする部分もありつつ、基本的な動作をPTが、より応用的な動作をOTが担っています
 例えば、買い物やゴミ出し、自分の部屋の掃除などは入院中になかなか体験できないため、自宅に帰るまでに不安になることが多い動作です。こうした不安は、筋力や、歩くことができる距離が伸びてもなかなか払拭できないことがあります。
 そのためOTは、これらの動作を実際の環境に近い状態で練習してもらうことで、「できるかもしれない」と自信をもってもらうことにつなげています。患者さんが自宅に帰るにあたって何か不安があれば、ぜひOTに声をかけてくださいね。

みややん

みややん

言語聴覚士(ST)、11年目。「STって何してくれるの?」「STって少ないよね。何で?」などの質問を受け続けている一方で、「STって必要だよね」とも言っていただき、周りの人によくしていただいている。

発音、食事、会話などで「ん?」と思ったら呼んでください

 「コミュニケーションの違和感についてはSTに相談して!」といっても過言ではありません。とはいえ、それでは相談しづらいですよね(笑)。
 具体的には、「発音が悪い」「食事時の飲み込みが悪い」「何だかやりとりがスムーズではない」、このあたりが相談のしどころかと思います。これらの違和感は、「ゆっくり話せば……」とか「ゆっくり食べれば……」といった声かけだけではなかなか改善しないので、モヤモヤしたらSTにご相談ください。
 歯科につないだほうがよいのか、食事形態を変更すれば食べられるのか、高次脳機能障害があるので対応を工夫する必要があるのかなど、その患者さんに合った対応・提案ができると思います。

多職種連携のリアル【第15回】看護師からPT・OT・STへの質問②

この記事は『エキスパートナース』2021年2月号連載を再構成したものです。
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