日々の看護業務のなかで感じるさまざまな悩み。内容によっては他職種に相談することで、すぐに解決するかもしれません。どんな状況で、どんな職種の人が頼りになるか、現場の声から考えます!

おおひらおおひら
理学療法士(PT)
新卒から総合病院で急性期~回復期までを経験し、現在は施設勤務のPT。多くの患者さんに対応するなかで、困ったときはいつもナースに助けてもらっていた。

すますま
作業療法士(OT)
大学病院にて働くOT。入院している患者さんの生活範囲を広げるべく、ナースとの相談、連携を行っている。ナースとは「困ったときはお互い様」の関係。
●理学療法士(PT:Physical Therapist)
リハスタッフの一員。主に寝返り・立ち上がり・歩行といった基本的動作能力の改善を図るため、筋力増強練習や歩行練習などを行う。
●作業療法士(OT:Occupational Therapist)
リハスタッフの一員。対象となる人々にとって目的や価値のある生活行為を中心として、応用動作能力や社会適応能力の向上を図るため、道具や環境の調整を含めた治療・指導・援助を行う。
患者さんの身体に直接触れる業務では、時に患者さんとのやりとりで負担を感じることも。患者さんにはどのようにアプローチをするとよい?
病棟勤務の看護師です。トイレや歩行訓練など患者さんに触れる場面で、「触らないで」「自分でやるから」と、患者さんから拒否されることがあります。病状によっては、介助の声かけが理解できないこともあると思いますが、歩行状態も不安定で、安全のためには身体に触れることは避けられません。リハビリテーションスタッフ(リハスタッフ)のみなさんは、特に身体に触れる機会が多いと思いますが、どのようなことに注意して介入しているのでしょうか。
リハスタッフに聞いた!ナースも実践できるコツ
相談内容のように、患者さんから介助の拒否をされてしまうと、次に介入するときに躊躇してしまいますよね。そこで、業務のなかで患者さんの身体に直接触れる機会が多いリハスタッフが、ナースも実践できるコツを紹介します!
患者さん本人からの情報と、スタッフどうしがもっている情報を共有しよう
PTとしては、「介助で不快にさせているところがないか」を普段から意識して、検討しています。触れる衣服や身体の部位、介助の力を入れるタイミング、声かけの方法……。これらを少し間違えるだけでも、患者さんにとって不快な介助になることがあります。
患者さんに直接聞けるような場合には、「介助で気持ち悪くなるところはないですか?」「介助で痛くなるところはないですか?」などと確認し、原因を探してみましょう。
また、ナースから直接聞きにくいような場合には、担当のPTから聞いてもらうように相談してみることも有効です。患者さんとしても、ナースの目の前では言えないようなことが、第三者である立場のリハスタッフにこそ言えることもあります。まずは検討しやすい介助方法を考えてみましょう。
OTとしては、「リハスタッフが把握していない情報がまだ何かあるのではないか?」と考えるようにしています。例えば、以下の情報などを確認します。
- その人自身の性格や考え
- 1日以内に起きた出来事(直近で何があったのか)
- その人が認識している現在の状況
もしかしたら「今回の相談」の患者さんは、長年1人で暮らされていて、人の助けを借りることに抵抗がある方(1の情報)なのかもしれません。または直前に、別のスタッフとの間で信頼関係が失われるようなことがあった(2の情報)のかもしれません。あるいは患者さん自身が混乱していて、入院していることを認識できていない(3の情報)ということも考えられます。
ナースとリハスタッフでは患者さんとの関係性が異なるので、それぞれに情報を共有し合うことが大切です。患者さんの反応がよいほうの職種が、どちらかの代理で患者さんの指導にあたるように助け合うのも1つの方法かと思います。
PTとOTが行っている、患者さんへの実際のアプローチ
今回のように介助に拒否のある患者さんでは、介助によって動作時の痛みが助長されることがその原因になっていることがあります。PTは動作の専門家として、動きのなかで「いつ、どのように痛みが生じているか」も観察しています。そこから、痛みが生じにくいような触れ方や声かけの方法も検討しています。
例えば、立ち上がりでズボンを引き上げるとき股に食い込んでしまうと不快感がありますが、ズボン全体でお尻を包み込むように引き上げると、不快感は減ります。また、立位保持のときに指先で腋窩(えきか)を支えると痛みが生じやすいので、手のひらで包むように支えて接触面積が大きくなるようにします。ささいなことのようですが、介助される側にとっては大きな違いです。
OTは生活にかかわる専門家として、生活全体を見て状況を考えます。介助の介入を拒否している患者さんも、すべての活動を拒否するわけではなく、活動内容や時間帯、状況によって反応は変化します。
拒否するか否かの判断には、環境やその人の習慣なども影響しますが、なかでもその人の興味・関心や価値観が重要です。そこで作業療法では、患者さんの興味・関心を「観察だけ」でとらえる意志質問紙(VQ:volitional questionnaire)を用います。VQはさまざまな場面、状況を観察し、そこで観察された行動から意志をくみとるものです。
例えば、早朝・食後・日中などの時間帯、声かけの仕方、活動別などにVQを測定して比較することで、患者さんが興味を示しやすい状況をとらえます。こうしたツールを用いることで、患者さんにとって受け入れやすい状況を理解することができます。
また、拒否されずに介入できた場合にも過干渉せずに、できる限り患者さん自身で動作を行ってもらい、小さな失敗を経験してもらうことも心がけています。これは必要最低限の介助箇所を把握する意味と、患者さん自身にも身体に触れて介助する必要があることを認識してもらう意味があります。
患者さん自身がさらに動作に挑戦したいというときは、リスクを十分に説明したうえで、できる限り応えるようにしています。
PTとOTが実践していることでナースができること
痛みの評価ツールにはNRS(Numerical Rating Scale)やVAS(Visual Analogue Scale)などがあります。これらは日々の患者さんとのかかわりのなかでも簡易にチェックができるので、痛みの変化を追うためにもぜひ活用してみてください。介助方法を変えることによって痛みの程度が変化してくるのがわかると、それだけで日々の介助への意識づけが変わってきます。
そして、そこで得られた情報をリハスタッフと共有して、さらによい介助ができないかを検討していきましょう。ついつい、「看護場面だから……」「私の介助が下手だから……」という理由で情報共有することをためらってしまうものですが、知らないことを知ってもらえるチャンスだと思って声をかけてみてください。
OTが行うかかわりは、どれもナースが行えるものです。ナースは、時間的余裕は少ないかもしれませんが、患者さんと何度もかかわる機会があります。もし時間をつくることができれば、OTと同じように「患者さんがどのように行動したいか」を聴取し、それに合わせた介助方法を一緒に決めていくこともできると思います。ですが、実際の現場ではそこまで行うことは難しいので、患者さんごとにリハスタッフにかかわり方を尋ねて、共有していきましょう。
反対に、リハスタッフはナースとの情報共有を通して、本来であれば時間をかけて何度もかかわることでわかるような患者さんの問題を知ることができるので、より病棟での生活が過ごしやすくなるよう検討していくことができます。誰にでも効く万能なコツはなかなかありませんが、お互いにひと言声をかけ合う多職種連携は、何かを変えるヒントになるかもしれません。
- 1.da las Halas CG,Geist R,Kielhofner G,山田孝訳:意志質問紙法(VQ)改訂第 4 版使用者手引書.日本作業行動学会,東京,2009.
この記事は『エキスパートナース』2022年3月号連載を再構成したものです。
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【第1回】リハスタッフとの申し送りが難しい!
【第11回】多職種連携でわからないことは、他職種に聞こう
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