日々の看護業務のなかで感じるさまざまな悩み。内容によっては他職種に相談することで、すぐに解決するかもしれません。どんな状況で、どんな職種の人が頼りになるか、現場の声から考えます!
【第1回】リハスタッフとの申し送りが難しい!
【第10回】多職種を交えた食事介助は具体的にどうしたらよい?
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喜多きた
理学療法士(PT)
回復期リハビリテーション病院での勤務経験がある。スタッフが無理をせずに、かつ患者さんが前向きに自主トレに励める環境づくりが得意。
ばさかばさか
作業療法士(OT)
精神科病院での勤務経験がある。限りある時間のなかで、働きかけを工夫して対象者の健康に寄与したいと考えている。
●理学療法士(PT:Physical Therapist)
リハスタッフの一員。主に寝返り・立ち上がり・歩行といった基本的動作能力の改善を図るため、筋力増強練習や歩行練習などを行う。
●作業療法士(OT:Occupational Therapist)
リハスタッフの一員。対象となる人々にとって目的や価値のある生活行為を中心として、応用動作能力や社会適応能力の向上を図るため、道具や環境の調整を含めた治療・指導・援助を行う。
ナースの人数が少なくて忙しく、積極的にリハビリテーション(リハビリ)に協力できていない現状がある。限られた状況でできることを考えたい!
整形外科病棟の看護師です。リハビリテーションスタッフ(リハスタッフ)から、「病棟で行う患者さんの自主トレーニング(自主トレ)の見守りなど、どんどんやってほしい」と言われることがあります。
しかし、スタッフナースの人数も限られているし、業務も忙しくてなかなか時間がとれません。リハビリの時間以外でも継続してできることをやっていきたいと思うのですが、どうやったらもっとうまくできるでしょうか。
忙しいときも、リハスタッフと協力して患者さんを見ていく方法
患者さんのリハビリにかかわりたいと思っていても、人手や業務のことを考えると難しい場面も多いと思います。そんなときでもリハスタッフと協力して有効に時間を使い、患者さんを見ていく方法を紹介します。
看護師の実情に合わせた自主トレ計画をつくってもらおう!
まずは、看護師の実情をリハスタッフに伝えてみましょう。例えば、「忙しいから無理」と伝えるだけではなく、「夕方の申し送り前は時間がとりやすい」「入浴がない日は人員に余裕がある」といった時間や人に関する具体的な内容を伝えます。
リハスタッフはこれらを知ることで、「月・水・金曜日の15時から10分程度、平行棒内歩行訓練の見守りをお願いします」といった実践可能な自主トレ計画を立てることができます。
また、リハスタッフには自主トレする患者さん全体をマネジメントしてもらうように依頼しましょう。例えば、「同じメニューのAさん・Bさんは、2人同時に自主トレを行う」「耐久性が低いCさん・Dさんは、交互に休憩しながら歩行練習を行う」のような自主トレ計画があれば、看護師も短い時間で多くの患者さんとかかわることができるのではないでしょうか。
短時間でもできるかかわり方を考えてもらおう!
患者さんが自分1人で自主トレをできる人ならば、見守りは必要ないと思います。1つ実践した例を挙げます。
そこで担当させていただいた患者さんは「自主トレはできるけれど、看護師さんに話しかけるのが苦手」という方でした。そのため、その日の自主トレが終わったら病棟の看護師に申告してサインをもらい、そのときに伝えたいことも伝えてみる、というシステムにしました。病棟の看護師には「○○さんからサインを頼まれたときにはお願いします」と伝えておくことも共有しました。
また、とあるリハスタッフは「看護師にやってほしいこと」をリスト化し、そのリストを電子カルテにも記入するようにしたり、ナースステーションや患者さんのベッド脇に置いておくようにしたりしていたそうです。この方法は、看護師がパッと見て、その場でできることを協力するために有効だと思います。
日常生活もトレーニングにしていこう!
看護師の見守りが必要な自主トレの多くは、「活動量を増やすこと」が目標とされています。そう考えると、自主トレ以外の手段として「日常生活をトレーニングにする」という方法もよいものです。例えば、
- 過介助になっている移乗や起き上がりを適切な介助量にする
- トイレで立位をとってもらうときに、いつもより3秒長く立ってもらう
- 昼食のデイルームへの送迎だけは歩行器を使い、その他の場面では歩行器なしで生活してもらう
など、さまざまな場面にひと工夫加えるだけで活動量をアップさせることができます(図参照)。
自主トレの時間や人員の確保が難しいときには、こうした日常生活のひと工夫をリハスタッフに相談してみてください。このとき、リハスタッフには受け持ち看護師以外にも、介助方法や声かけの方法を伝えてもらうようにしましょう。病棟スタッフ全員が統一した方法を実践できれば、特別な自主トレをしなくても十分な効果が期待できます。
多職種連携でわからないことは、他職種に聞こう【最終回】患者さんの身体に直接触れる業務ではどんなことに注意する?(12月14日配信予定)
この記事は『エキスパートナース』2022年2月号連載を再構成したものです。
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