喀痰培養検査における吸引での喀痰採取方法とは?検体採取のための手順や注意点、喀痰培養検査に影響する細菌などを看護師向けに解説します。

「ベッドサイド検査手技の根拠」の連載まとめはこちら

Q. 喀痰採取では吸引時のものを提出してもよい?

A.
吸引キャップ付き採痰容器を用いることで、吸引時の検体を提出できます。

喀痰の培養検査に影響する細菌は?

 喀痰の培養検査は下気道感染症または肺炎の診断のために行われます。表1のような細菌の関与が高いことが知られています1

表1 喀痰の培養検査に関与が高い細菌

市中肺炎に関係する細菌
●肺炎球菌
●インフルエンザ菌

院内肺炎に関係する細菌
●耐性菌:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
●ブドウ糖非発酵菌:緑膿菌
●腸内細菌:大腸菌、クレブシエラ属菌、エンテロバクター属菌

(文献1より引用、一部改変)

吸引による喀痰採取のポイント

 喀痰は患者に喀出してもらい採取しますが、日常生活動作(ADL)の低い意識障害患者などでは、吸引キャップ付き採痰容器(図1)を接続し、カテーテルの先端で喉頭部を刺激することにより排痰を誘発し、吸引する方法を試みることもあります2

図1 吸引用の喀痰容器

吸引用の喀痰容器

MMI気管吸引キット 喀痰容器フィルター型(画像提供:村中医療器株式会社)

 吸引によって得られた吸引痰を培養検体として提出する場合は、吸引前に手指をよく消毒し、手袋を装着します。唾液や鼻汁が多い患者の場合は、口腔内常在菌の混入を可能な限り避けるため、あらかじめ唾液や鼻汁を取り除いてから、吸引キャップ付きの吸引チューブに切り替えて吸引します。吸引の内容物をよく観察し、診断価値の高い膿性痰が得られたことを確認してから提出します。

検査の精度を高めるための喀痰採取の注意点

 喀痰の細菌培養検査で最も重要なポイントは、口腔内常在菌の混入が少ない膿性の喀痰を採取することです(図2-①)。混入が多いと、検出された菌を原因菌か口腔内常在菌か区別することが困難となり、診断価値が下がるためです。

図2 喀痰の性状

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