この記事は『エキスパートナース』2018年6月号特集を再構成したものです。
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色素沈着した皮膚に起こっている(いた)こと

 色素沈着は、茶色く変化した皮膚です。皮膚の基底層と呼ばれる表皮の一番下の部分にメラニン色素が増加した状態を指します(図1)。“強い圧迫や紫外線などによる炎症が起こった後の名残”と言い換えることもできます。

図1 色素沈着

 一方、高齢者にみられる皮膚炎などの湿疹病変が慢性化した皮膚の変化を「苔癬化(たいせんか)」といいます。角質(角質層)が厚くなって、さざ波状にくすんで見えることを指します(図2)。

図2 苔癬化

 つまり、皮膚の解剖上では、細胞が生まれ変わる基底層に変化が起こるのが「色素沈着」で、角質が厚くなっていく表面の変化を「苔癬化」というように区別します。

 特に、骨突出部において、色素沈着がみられる場合には、炎症後の色素沈着や、出血による色素沈着も考えられます。それは、過去に褥瘡があったことを示す可能性が高く、褥瘡発生のリスク因子と考えて予防ケアをする必要があります。

瘢痕治癒した皮膚に起こっていること

 深い褥瘡の場合、欠損部を埋めていく組織を肉芽組織といいますが、肉芽組織はコラーゲン以外のさまざまな物質と結合しあい、徐々に真皮に近い丈夫な組織になっていきます。それを「瘢痕組織」といいます。

 このように、肉芽組織に置き換わった創傷では、瘢痕治癒という最終形を迎えます。その部分は、やや白っぽく、あるいはピンクがかっており、肌色とはまた違う色素であることが見受けられます(図3)。

図3 瘢痕治癒した褥瘡

 瘢痕治癒した組織をもっている場合、過去に深い褥瘡があったということが推測されます。
 深い褥瘡が治ったあとの問題は、皮膚の付属器がないことです。付属器がないと、汗や皮脂が分泌されず、角質層の皮脂膜形成が不完全となります。

 バリア機能の低下した皮膚では、スキンケアが適切になされないと、褥瘡を再発するリスクが高くなるのです。

このような皮膚を発見したら?

1)圧の管理

 リスクのある人すべてに体圧分散寝具を使用することが望ましいですが、数量に限りがある場合は、自力で歩行や寝返り、端座位が保持できる人以外にエアマットレスなどを用いて、局所の圧管理を行います。

 体位変換が禁止 ・ 制限されている場合は、圧抜きグローブ(ポジショニンググローブ)を用いて局所の圧を一時的に取り除きます。
 また、できるだけADLが拡大するようにリハビリテーションを行うことを計画に入れるとよいでしょう。

2)スキンケア

 予防の基本である洗浄(清潔)・保湿・保護(被覆)を行います。 患者さん自身ができる場合は、毎日実施してもらいましょう。特に保湿は重要です。

3)患者教育

 例えば、患者さんに写真を見せて、「○○の理由で褥瘡になりやすいので、予防したいと考えています」と予防の理由と患者さんへの想いを伝えます。

 そして、「ベッドで同じ姿勢で過ごすのは避けましょう」「体位変換を手伝いますので、協力してくださいね」「スキンケアを一緒に行いましょう」などの教育を行うと効果的だと思います。

1. 日本褥瘡学会 編:褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版.日本褥瘡学会,東京,2022.

症例写真でわかる!褥瘡・創傷ケア【第12回】仙骨部のd1褥瘡のケア