この記事は『考えることは力になる』(岩田健太郎著、照林社、2021年)を再構成したものです。
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ナースはロジカルではない?

 話を聞けと言っておきながら、いきなりケンカ売ってんのかこのやろう、とまたお叱りを受けそうです。被害妄想もそろそろ暴走しそうです。
 
 過度の一般化は禁物ですし、学問的にデータ集積・分析したわけではないのでやや乱暴な話になりますが、ぼくの観察したところ、多くのナースは論理的な思考、すなわちロジカルな思考が苦手なようです。「この前提がそもそも間違っている!」という反論がありましたら、もちろん拝聴いたします。ただし、「私たちだってとっても論理的よ!キーッ!」なんて反論をすれば、むしろぼくの仮説を補強してしまいますので、ロジカルに反論いただければ幸いです。
 
 さて、ぼくの仮説の是非はおいといて、ここでは「ナースはあまりロジカルでない」仮説を(暫定的に)受け入れたとしましょう。

 問題は、「なぜか」ということです。
  
 多くの場合、ものごとの原因は複雑です。たいていのことは、自動販売機のボタンを押すとジュースが出てくる、みたいにわかりやすい因果関係は存在せず、ニュートン力学みたいに初期条件を与えるとボールの行き先が予見できるみたいな一意性もありません。通常、ぼくらのまわりにある現象の原因はいろいろです。あれやこれや、あれやこれや、あれやこれやの出来事が重なって、ある一つの結果が生じるのです。

「お前、このおかず、まずいな」という心ない夫の一言がきっかけで離婚に至った夫婦がいます(フィクションです。ぼくとはなんの関係もありません、念のため)。
 
 このとき、「おかず、まずいな」はいかにもまずい発言なのですが、これが離婚の「原因」というのは無理筋だとぼくは思います。おそらく過去にあんなことや、こんなこと、たくさんの出来事が重なって、もう糸一本くらいの一触即発の状態に、「まずいな」のとどめが離婚を決断させた、と考えるべきでしょう。

 生々しい例え話ですみません。身につまされちゃった方、ごめんなさい(ぼくもバツイチなんで、気持ちはわかります)。