この記事は『考えることは力になる』(岩田健太郎著、照林社、2021年)を再構成したものです。
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質問がうまくできないのはナースだけではない

 さて、ここまでお読みいただいた皆さんのなかには、「あれ?」と気づいた方もいるんじゃないでしょうか。それってナースの世界だけの話ちゃうやん。医者だって質問苦手だし、行動主義的、形式主義的でしょ。ついでに権威主義的でしょ。
 
 おっしゃるとおり~。
 
 そうなんです。これって看護の世界特有の問題ではなく、医療界全体にはびこる普遍的な問題なんですね。もっというと、日本全体にはびこる病理といえるかもしれません。「上手に質問を重ねる」訓練を受けていないのは、なにもナースだけでなく、ほとんどの日本人共通の問題ですから、この「上手に質問を重ねられない」問題は、ひいては日本の学校教育の根本問題ともいえましょう。だいたい文科省の官僚たちからして、「答えを出すのがやたら上手で、質問するのが苦手」な代表選手みたいなものですからね。
 
 官僚同様、医者も頭の回転が速くて、偏差値が高いだけに「答えを出す能力」は秀でています。逆にそれが足かせになって、質問をするのはむしろ人より下手だったりします。プライドの高い医者は多いですが、そのプライドが邪魔してさらに質問はできなくなります。質問するとは「私はわかりません」というカミングアウト、白旗をあげることを意味しますから。