ワケがあって医師がオーダーしている画像検査。臨床場面でナースがとりたい画像からの情報をわかりやすく示します。第42回は、意識障害のある患者の脳ヘルニアを疑って、midline shiftがないかを画像で見る際のポイントを紹介します。まずは、頭蓋内圧亢進が進行して起こる脳ヘルニアについて確認します。
意識障害の患者での画像の着目ポイントは第39回を参照ください。
「脳ヘルニア」とは?
頭蓋骨内は閉鎖された空間のため、脳出血などで頭蓋内圧亢進が起きた場合、その圧を下げるために脳実質が別の空間に逃げようとします。
このとき、脳組織が一定の境界を越えて隣接腔へ嵌入(かんにゅう)した状態を脳ヘルニアといいます。図1に示すように、脳実質が嵌入する場所によって色々名前はついていますが、特にテント切痕ヘルニアと大後頭孔ヘルニアは脳幹を圧迫するため、重要です。
図1 主な脳ヘルニア

脳ヘルニアを疑って、midline shiftがないか見ている!
脳幹以外の出血でも注意
脳幹へのダメージは、直接出血を起こすパターンだけではありません。
皮質下出血や硬膜下血腫、小脳出血といった脳幹以外の出血でも、脳幹へダメージを起こすことがあります。それが、脳ヘルニア(頭蓋内圧亢進状態)を起こしたときです。
脳ヘルニアを起こし脳幹が圧迫されれば、その圧で脳幹が傷つき、結果的に脳幹出血のときと同じように呼吸が止まったりしてしまいます。
そのため、この脳ヘルニアを疑う所見を認めたときに緊急手術を行い、血腫除去や開頭減圧が必要となることがあるのです。
脳ヘルニアの徴候「midline shift」
意識障害を伴う急変時にわれわれ医師が頭部CTをオーダーするのは、意識障害の原因検索に加えて、この脳ヘルニア所見の有無を確認し、その後の治療方針や予後を予測するためです。
そしてこの、脳ヘルニアを頭部CTで評価する情報の1つが「midline shift(ミッドライン シフト)」(正中偏位)になります。 正常な脳は基本的に左右対称な形をしており、大脳の中心には大脳鎌という膜があります(図2-①)。
頭蓋内になんらかのダメージ(出血や腫瘍、脳梗塞による浮腫など)が起き、脳圧が亢進すると、この膜が押しやられて中心がズレ、いびつな形をするようになります(図2-②)。これがmidline shiftです。
図2 ①正常な頭部CT(左)と、①右被殻出血の頭部CT(右)
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