皆さんが看護師として、日々行っている臨床現場での「実践」。それらは、どんな“気づき”をきっかけとして起こるのでしょうか?また、“患者さんの力”をどう引き出すのでしょうか?
事例紹介をもとに、看護介入をナラティブに伝えます。
実践を記述するということ
近年、看護領域は空前のエビデンス(evidence)ブームであるように感じられます。しかしながら、私はこのブームにあえて警鐘を鳴らしたいと考えます。
エビデンスは科学的思考の要素の1つです。Sackett(1996)1はその著書のなかで、「Evidence based medicine is not “cookbook” medicine」(EBMはレシピ〈ガイドライン〉通りに行う診療ではない)と述べています。
看護もまた然(しか)りです。病をもつ人を対象としている看護においては、「科学的根拠」を基盤にしながらも、「病態」「患者の価値観」「人生における病の意味」「生活や希望」を統合して患者さんに応じたケアを選別するからです。
ナラティブの重要性
私は“エビデンスがあるからする”“エビデンスがないからしない”ではなく、その患者さんにとってのベストをともに考えることから実践がスタートすると考えます。そしてそれはエビデンスとナラティブ(narrative:患者の“語り”)の融合ではないかと考えます。
そこで、私はナラティブの重要性を読者の方々と共有したいと思いました。私たちは患者さんの“表情”や“何気ないひとこと”に立ち止まり、実践をスタートします。
立ち止まったとき、方略を考えるときにエビデンスを活用しながらも、その実践にはナラティブが加味される。この絶妙なバランスが看護実践であり、それを明らかにするには実践の記述しかないと考えます。
本連載では、各領域で活動している専門看護師の方々に、誌面上で、患者さんとのかかわりの記述(語り)をしていただきます。
記述された看護実践を、読者の皆さんとひも解きながら、看護の醍醐味を共有しましょう。
- 1. Sackett DL,et al.:Evidence based medicine:what it is and what it isn’t.BMJ 1996;312(7023):71-72.
共有したいケア実践事例【第2回】延命のための化学療法を続けている患者さんの事例
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この記事は『エキスパートナース』2016年1月号特集を再構成したものです。
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