診察同席により感じた“Aさんに必要な支え”

 翌々週、事前に主治医に同席する了承を得ておき、私はAさんの診察に同席しました。

 Aさんはためらいながらも、予後について主治医に質問することができ、医師から予後について「治療に効果があれば約1年半、治療が難しくなれば半年」という説明を受けました。Aさんは「そうですか……」と医師をしっかりと見つめながら納得したように返答したあと、家族旅行について相談し、許可を得ると、安堵していました。

 診察を終えて外来治療室に移動すると、Aさんは家族旅行についてうれしそうに話したあと、表情を曇らせて沈黙し、「─ 最期ってどうなるのかなって思うんです。やっぱり苦しいんでしょうか。きっと動けなくなってくるだろうって思っているんですけど」「うちは90歳になる父も母も元気で、全然わからないんです。(死の)イメージがわかなくて」と話しました。

 私は、死に関連した話をしてもよいタイミングだと感じ、「そうですよね。どうなるのかって思いますよね」と応じながら、人それぞれ最期の迎え方は異なるけれど、倦怠感が増したり、食欲が落ちてきたり、今までできていたことが少しずつできなくなって最期を迎えることを説明しました。

 そして病状が進んでくると痛みが出てくることもあるけれど、今はとてもよい薬が出ており、痛みはコントロールできること。痛みだけでなく、体の不快なつらさや気持ちのつらさに対しては「サポートチーム」があり、専門的な支援を受けることで、楽になることを話しました。

 また、最期のころは、Aさんが考えているように、思うように動けなくなり寝ている時間が長くなってくること、眠るように最期を迎える方が多いことなどを話しました。