Aさんと共有した“最期”のイメージ

 Aさんは興味深い面持ちでうなずきながら、「そうなんですね。でもまだまだそんな時期が来るなんて思えなくて。こんなに元気なのにって思ってしまって」と話していました。

 私は、死を受け入れることへの抵抗はプロセスとして自然であると考えながら、最期を迎える時期について、「電車に乗っていて、トンネルに入ったときに、出口の光が遠くに見えますよね。そして光が遠いので“まだまだ”と思っていたら、意外と早くて、すっと出口を出てしまう。 ─ 最期を迎えるまでのときって、そんなふうに、思ったよりも早いということがあるかもしません」と話すと、Aさんは「そうなんですね。あ~、そんなふうにね……」とうなずきながら納得する表情をしていました。

 私は、Aさんが「死」を「最期」という言葉で表現していたことから、そのほうが話しやすいのではないかと考え、私もAさんに合わせて、「最期」という言葉を用いて話すように配慮しました。
 Aさんは、その後も通院しながら、希望の家族旅行を叶えて治療を継続されています。

共有したいケア実践事例【第3回】延命のための化学療法を続けている患者さんの事例をめぐるQ&A

この記事は『エキスパートナース』2016年1月号連載を再構成したものです。
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