脳卒中の終末期には、どのようなサインが現れるのでしょうか。終末期のサインの参考になる包括的な指標や、ホスピス導入の基準などを紹介しています。

認知機能低下やコミュニケーション能力の低下に注意

発症30日以内の死亡率は20~30%

 脳卒中とは、脳の血管に障害が生じる疾患です。厚生労働省人口動態調査によると、脳卒中は1950年代からわが国の死因の第1位になっていましたが1970年をピークに減り続け、2022年(令和4年)では第4位となっています1

 しかし、高齢化と脳卒中発症後の生存者が増加していることから、脳卒中のエンド・オブ・ライフ期に求められる医療・介護は以前にも増して複雑になっています。

 脳卒中では、初回発作後30日以内の死亡率は20~30%です。また、障害の種類や程度はさまざまですが 10年生存率は21%です。初回発作から1年以上での死亡原因は、脳梗塞の再発が20%、心疾患が40%といわれています2

 脳卒中を基礎疾患とする日本の在宅療養患者では、死因の43%が肺炎・脱水・窒息と、おおむね脳卒中とその進行、およびその他の因子による摂食嚥下機能の低下が原因となって起こるものと考えられます3

包括的な指標やホスピス導入の基準が“終末期”のサインとして参考に

①脳卒中の疾患軌道は複雑
 脳卒中は大まかに表1のように分類できます。

表1 脳卒中の分類

表1 脳卒中の分類

 このような脳卒中の種類による違いが疾患軌道(疾患の長期経過)に大きく影響するため、他の疾患に比べて複雑な経過をとり、脳梗塞(心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞)と脳出血を比較しても、傾向の違いがあります図14

図1 脳卒中の種類による経過の違い

図1 脳卒中の種類による経過の違い
(文献4より引用、一部改変)

 がんと違って非がん疾患ではいつからが“終末期”なのかについて、診断方法はまだ確立していません。わが国の場合には、超高齢化やそれに伴う多疾患併存が加わることで、さらに判断が難しくなります。

②SPICT™や米国の基準を参考にできる可能性がある
 しかし、ホスピスが発達した欧米では、ホスピスの導入基準に照らした疾患ごとの指標などが考えられています。
 英国の「SPICT™」は、健康状態が悪化、もしくは亡くなるリスクを同定し、緩和ケアのニーズを評価するツールです。『「SPICT™」における「神経疾患」の指標』に示した内容が検討を検討することができます。

「SPICT™」における「神経疾患の指標」

 以下のうち、1つでもあてはまれば、「終末期」と考える

●最適な治療にもかかわらず身体機能・認知機能が低下している
●コミュニケーション困難を伴う発語の問題、嚥下機能の低下が進行している
●誤嚥性肺炎を繰り返している、呼吸困難または呼吸不全がある
●脳卒中後に著しい機能低下と進行中の障害を伴う麻痺が持続している

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