白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など、血液がんの最新の治療・ケアについて解説。今回は、化学療法中に必要なリハビリの方法を詳しく紹介します。
化学療法中のリハビリテーションはなぜ必要?
がんの3大治療である手術療法、放射線療法、化学療法のうち、約8割のがん患者さんが経験している治療が化学療法です。化学療法はその効果と有害事象の程度を天秤にかけ、各患者さんに最適なラインを見きわめながら進められます。
しかし、化学療法の有害事象が引き起こす身体症状により、廃用症候群*1が進行して身体機能が低下することで、さらなる機能障害を引き起こすという負のサイクルに陥ることがあります。
特に、この負のサイクルが高齢者に起こった場合、容易にPS(パフォーマンス・ステータス)の低下を引き起こし、治療の中止・中断を余儀なくされることがあり、生命予後に直結してしまうこともあります。
化学療法・放射線療法中の患者さんに対する運動療法は、運動耐容能、筋力、身体機能・活動性、倦怠感、ADL、末梢神経傷害、QOLへの改善効果が認められており、実施が推奨されています。
近年は、がんを含む多くの分野で予防的なリハビリテーション(以下、リハビリ)が行われています(図1)。 化学療法中の血液がん患者さんにおいても、機能障害が起こってからリハビリを開始するのではなく、身体機能が低下しないよう、リハビリによって廃用症候群を予防していくことは非常に重要です。
*1【廃用症候群】=過度の安静や活動性の低下によって身体に生じたさまざまな状態。
図1 Dietz分類(がんのリハビリテーションの分類)

予防的なリハビリテーションとは?
予防的なリハビリは、負荷量の強いレジスタンストレーニング*2よりも、基礎体力を維持するための有酸素運動や適度な筋力トレーニングを、いかに継続して実施できるかがポイントです。
当院の血液内科で行っているリハビリ内容を以下に示します。
*2【レジスタンストレーニング】=筋力向上のために筋肉に負荷をかける運動。スクワットや腕立て伏せなどが代表。
予防的なリハビリテーションの内容(大阪国際がんセンターの例)
歩行練習
●万歩計を貸し出し、1日の目標歩数を設定して歩く
●目標歩数は2,000~10,000歩/日程度
エルゴメーター(エアロバイク)
●1回15~20分を1~3回/日程度
●軽く汗ばむ程度をめやすに、負荷量や速度を設定する
筋力トレーニング
●体幹および下肢を中心に自重での筋トレを実施する
●臥位、座位、立位で行えるものをそれぞれ数種類ずつ指導する
●本人の能力に合わせて無理のない範囲で行えるようにサポートする
*血小板低値のときの低負荷での運動では、呼吸練習、臥位・座位での筋トレ(負荷なし)、歩行練習のなかから、患者さんの状態や能力に合わせて選択する
呼吸法練習(呼吸筋トレーニング)
●腹式呼吸を1回3~5分を2~3回/日程度実施
●好きな音楽を聴きながらなど、リラックスして実施するように指導する
※その他、ストレッチやリラクゼーションも適宜実施。
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