“バイオ医薬品”“バイオシミラー”ってどんな薬?
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おさえておきたいこと

バイオシミラーに期待されることと課題
●期待されること:医療費の抑制に寄与すること
● 課題:先行バイオ医薬品と適応がまったく同じでない場合や混用した場合の影響に関するデータがないこと

医療費抑制への寄与が期待される一方で、 課題も指摘されている

 2023年4月現在、日本で承認されているバイオシミラーの一覧を表1に示します。新たに承認されるバイオシミラーについては、引用文献1で確認するようにしてください。

 バイオシミラーに最も期待されるのは、医療費の抑制に寄与することです。バイオ医薬品は人間の体内にある生体分子を応用してつくられるもので、副作用も比較的少ないといった利点がある一方で、“バイオ医薬品”“バイオシミラー”ってどんな薬?・表1に示すように高額なものが多くなっています。

 バイオシミラーは、先行バイオ医薬品の約7割の薬価であることから、疾患や適応によっても異なりますが、患者の医療費負担が軽減されることもあります。

 一方、課題となるのは先行バイオ医薬品とまったく同じ適応ではないものや、混用と言って先行バイオ医薬品とバイオシミラーを交互に使用したり切り替えたりしての使用が、臨床効果に影響しないかどうかのデータがないために問題視される場合があることです。

 バイオ医薬品は、先行バイオ医薬品の開発によって治療効果が確認され広く使用され、発展してきました。バイオシミラーの登場によって、今後さらなるエビデンスが得られるように使用成績のモニタリング結果に注目していく必要があるかもしれません。

表1 最新のバイオシミラー(2024年9月19日現在)

●ソマトロピン
主な適応疾患:成長ホルモン分泌不全性低身長症
承認年月:2009年6月

●エポエチン アルファ
主な適応疾患:透析施行中の腎性貧血、未熟児貧血
承認年月:2010年1月

●フィルグラスチム
主な適応疾患:造血幹細胞の末梢血への動員、好中球増加促進、好中球減少症
承認年月:2012年11月

●インフリキシマブ
主な適応疾患:関節リウマチ、ベーチェット病、乾癬(かんせん)、強直性脊椎炎、クローン病、潰瘍性大腸炎
承認年月:2014年7月

インスリン グラルギン
主な適応疾患:インスリン療法が適応となる糖尿病
承認年月:2014年12月

●リツキシマブ
主な適応疾患:CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫
承認年月:2017年9月

●エタネルセプト
主な適応疾患:関節リウマチ、若年性特発性関節炎
承認年月:2018年1月

●トラスツズマブ
主な適応疾患:HER2過剰発現が確認された転移性乳がん
承認年月:2018年3月

●アガルシダーゼ ベータ
主な適応疾患:ファブリー病
承認年月:2018年9月

●ベバシズマブ
主な適応疾患:進行・再発の結腸・直腸がん、進行・再発の非小細胞肺がん
承認年月:2019年6月

●ダルベポエチン アルファ
主な適応疾患:透析施行中の腎性貧血
承認年月:2019年9月

●テリパラチド
主な適応疾患:骨粗鬆症
承認年月:2019年9月

インスリン リスプロ
主な適応疾患:インスリン療法が適応となる糖尿病
承認年月:2020年3月

●アダリムマブ
主な適応疾患:関節リウマチ、尋常性乾癬、関節症性乾癬、強直性脊椎炎、クローン病
承認年月:2020年6月

インスリン アスパルト
主な適応疾患:インスリン療法が適応となる糖尿病
承認年月:2021年3月

●ラニビズマブ
主な適応疾患:ルセンティス硝子体内注射キット
承認年月:2021年9月

●ペグフィルグラスチム
主な適応疾患:がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制
承認年月:2023年9月

●ウステキヌマブ
主な適応疾患:尋常性乾癬、乾癬性関節炎
承認年月:2023年9月

●アフリベルセプト
主な適応疾患:中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
承認年月:2024年6月

※上記は一般名。日本医薬品一般名称の「(遺伝子組換え)」と「[後続]」は省略して表記している
※文献1を参考に作成

1.日本バイオシミラー協議会ホームページ:日本で承認されているバイオシミラー一覧.
https://www.biosimilar.jp/biosimilar_list.html(2024.12.5アクセス)

この記事は『エキスパートナース』2021年9月号の記事を再構成したものです。
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