日常的に行う末梢留置カテーテルの穿刺や管理について、それらを「なぜ行うのか」を解説していく連載。末梢留置カテーテルのロック方法について、ヘパリンロックではなく生食ロックを選択する理由を紹介します。陽圧ロック実施時の注意点もおさえておきましょう。

ヘパリン生食と生食で、ルートの開存や静脈炎発生に差はない

 末梢留置カテーテルを使用しない場合に、しばしばヘパリン生食液で末梢静脈ルートを満たし、次回の輸液まで血栓形成による閉塞を予防する方法がとられます。

 しかし、ヘパリンはカテーテルにCNS(coagulase negative staphylococci、コアグラーゼ陰性菌)の付着を促進するという報告があります1。また、ヘパリンの常用は、1日あたり250~500単位の低用量でも血小板減少や血栓塞栓症、出血の合併症を引き起こす可能性があることが指摘されています2

 一方、ヘパリン生食でロックを行った場合と生食でロックを行った場合では、末梢静脈カテーテルの開存や静脈炎発生に差がないと報告されています3-5。したがって末梢留置カテーテルのロックは、生食で行うことが適切と考えられます。

陽圧ロック実施の際は、必ず「生食注入をしながら」シリンジを外す

 カテーテルの閉塞は、カテーテル内に血液が逆流して血液が凝固することが主な要因です。可能なデバイス(図1)であれば、陽圧ロックという方法でカテーテル内への血液逆流を防ぐことができます。

 具体的には、内腔の少ない延長チューブを使用して生食を注入し、シリンジをルートから外す際も、生食を注入しながら行う方法です。カテーテル内を陽圧で維持するには、ある程度生食を残し、陽圧をかけた状態でシリンジをルートから外す必要があるためです。

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