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ナイチンゲールによる看護の定義とは
これまで深堀りポイントとして、看護における「てあて」や「観察」について説明してきましたが、そもそも、「看護」って何でしょう?今週は、「看護」とは何かを、ドラマにも出てくるナイチンゲールの『看護覚え書』からひもといてみたいと思います。
人類史上、初めて看護とは何かを記したナイチンゲール
そもそも「看護」には、決められた定義はありません。ナイチンゲール以外にも、いろんな人が「看護とは何か」について著作物で記しています。ただし、人類史上はじめて看護とは何なのかを記したのは、ナイチンゲールの『看護覚え書』でした。
『看護覚え書』は1859年末に発行されています(ちょうどりんたちが誕生する頃です)。またたくまに評判になり、1か月で1万5,000部も売れたとか(すごい数字!)。さらに驚くのが、看護師向けに書かれた改訂第2版を、わずか発売から約半年で出版しています(ナイチンゲール看護学校の開校に合わせて、参考書として採用されているようです)。現在、主に使用されているのはこの第2版のほうです。
『看護覚書き』による看護の定義
ナイチンゲールは、『看護覚え書』のなかで、これまで看護とは、せいぜい薬を飲ませたり、湿布を貼る程度の意味に限られていると前置きしたうえで、次のように看護について説明しています。
看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさなどを適切に整え、これらを活かして用いること、また食事内容を適切に選択し適切に与えること――こういったことのすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えること、を意味すべきである1。
今週、喉の痛みと発熱で寝込む多江に、りんたち看護学生が具だくさんの汁物を提供したり、何度も声をかけたり、雑に窓を開けたりして、患者である多江が不快に感じるエピソードが描かれました。まさに、ナイチンゲールのいう看護を、看護をする側、看護を受ける側双方が体得していた場面でした。
看護の役割は環境を整えること
このナイチンゲールの看護理論は、いわば「環境を整える」ことが看護の役割だとしています。環境とは物理的なものだけではなく、精神的なもの、社会的なものがあります。具体的に『看護覚え書』では、以下の12の項目が挙げられています。
1 換気と保温
2 住居の健康(清浄な空気・水、適切な排水、清潔、陽光)
3 小管理
4 物音
5 変化
6 食事
7 食物の選択
8 ベッドと寝具類
9 陽光
10 部屋と壁の清潔
11 からだの清潔
12 おせっかいな励ましと忠告
言葉だけだとわかりにくいかもしれないのが「小管理」という項目で、これは何かと言うと、「看護を提供する体制」のことです。自分がいないときでも看護が継続的に提供されることが重要であると説くこの項目はとても面白いので、いつか解説したいと思います。
病人に対する忠告ほどこっけいなものはない
「おせっかいな励ましと忠告」は、患者にとって苦痛であるため、やるようにとナイチンゲールは言っています。忠告に関して、以下のように手厳しく記しています。
この世で、病人に浴びせかけられる忠告ほど、虚ろで空しいものはほかにない。それに答えて病人が何を言っても無駄なのである。というのは、これら忠告者たちの望むところは、病人の状態について本当のところを知りたいというのではなくて、病人が言うことを何でも自分の理屈の都合のよいように捻じ曲げること――これは繰り返し言っておかなくてはならない――つまり、病人の現実の状態について何も尋ねもしないで、ともかくも自分の考えを押しつけたいということなのである1。
これは看護に限らず、さまざまな場面でも肝に銘じておきたいことですよね。
現代の看護師の役割とは
では、現代の看護師の役割はどのように定義されているのでしょうか。看護師等の資格や業務について定めた法律である「保健師助産師看護師法」(保助看法)では、以下のように定義されています。
看護師とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者もしくはじょく婦に対する療養上の世話、または診療の補助を行うことを業とする者
つまり、看護師は国家資格をもつ専門職であり、法律上は大きく分けて、①療養上の世話、②診療の補助の2つを担う職種として位置づけられています。
療養上の世話とは、患者さんの療養生活を支える援助のことをいいます。食事や清潔の援助など、まさにいま、りんたちが学んでいる内容です。 診療の補助は、医師の診療を補助する行為をいいます。これらをみると、ナイチンゲールが定義した看護は、現代の看護にもつながっていることがわかると思います。
それでは第6週の感想まとめです!
第6週「天泣(てんきゅう)の教室」感想まとめ
第6週のあらすじ
りん(演・見上愛)は、偶然再会したシマケン(演・佐野晶哉)から、その仕事や胸に秘めた夢を知ることになる。一方、多江(演・生田絵梨花)は縁談をめぐって思い悩んでいたが、ある夜、思いがけない異変に見舞われる。
(番組公式ホームページを参考に作成)
6-1 看護の演習が始まる!
この企画、普段ドラマを観ない自分が朝ドラリアタイに挑戦するというていで始まったのですが、大型連休で曜日の感覚がずれてしまい、なんと月曜日を逃してしまいました…。でも、便利な時代なのであとからでも観ることができます!リアタイ記録がこんなところで途切れてしまい、ちょっとショックでしたが、みなさんもあとから観れますので、ぜひ観ましょう。
6-2 新しい髪型みんな似合ってて素敵
バーンズ先生より今の髪型は不潔なので新しい結い方にしなさいと命令が(直美を除く)。みんな似合ってて素敵です。直美がりんの実家を訪れるシーンも、2人がお互いをさらに知ることができてよかったですね。そして日曜日にりんに会えるかもといつもお店に来ているシマケン、かわいいね。
6-3 看護師を見たことがないからわからない
バーンズ先生の演習が本格的にはじまるものの、寝衣交換や清拭でことごとく「これは看護ではない」と言われてしまうみんな。そんなバーンズ先生に「看護婦を見たことがないからわからない」と言うりんの主張は最もです。そんなりんに「自分で考えろ」と言うバーンズ先生。「何が大切なのか」いろいろ考えるなかで行った清拭に合格がでて、嬉しそうなりんが印象的でした。よかったね。
★バーンズ先生が「自分で考えろ」と言うのには、じつは『看護覚え書』にヒントがあります。『看護覚え書』のはじめにで、ナイチンゲールは次のように記しています。
私は、女性たちにいかに看護するかを教えようとは思っていない。むしろ彼女たちに自ら学んでもらいたいと願っている。そのような目的のもとに、私はあえてここにいくつかのヒントを述べてみた1。
考え方のヒントを伝えるので、自分で考えてほしいというナイチンゲールの考えを受け継いでいるのですね。
6-4 運命の人!?シマケン
道端でふいにぶつかる人はだいたい運命の人と決まっていますので、りんにとってシマケンは運命の人ですね(断定)。お互いに夢を語り合うりんとシマケン。シマケンはなんと子どもをあやすのもうまい!最高すぎる!番組公式Xによると、このシーンがクランクインだったとか!確かにこれまでのシマケンよりもなんかみずみずしさがあって違った気がしたけれど…(幻覚かも)。
6-5 いよいよ来週、実習スタート!
もともと医師を志望していたものの、養成学校の入学試験に落ちた多江が、自身が病気になり、バーンズ先生から看護を受けることで、看護師になる決意を新たにする回でした。多江の父親は結婚するように強く言っていたのに、あっさり多江の希望を受け入れて、ものわかりよすぎるのでは…と思いましたが、かわいい娘の真剣な想いを受け入れる親は素晴らしいですね。医師と看護師の役割の違いや、「看護とは何か」を経験をとおしてつかみはじめているようでした。
エキスパートナースwebでは見上愛さん・上坂樹里さんのインタビュー記事を掲載しているのですが、いま読むと、お2人の話しているお互いの役に対する思いなどについて、「なるほど」と感じられます。ぜひ読んでみてくださいね!
見上愛さん・上坂樹里さんのインタビュー記事
『風、薫る』見上愛さん、上坂樹里さんが語る明治のナースの強さと覚悟
来週から、装いも新たに実習がスタート!公式ホームページの人物相関図を見ると、シマケンがいないのが非常にひっかかるところですが、楽しみです!
- 1.フロレンス・ナイチンゲール著,湯槇ます,薄井坦子,小玉香津子,他翻訳:看護覚え書 第8版.現代社,東京,2023.
2.金井一薫:ナイチンゲールの『看護覚え書』.西東社,東京,2014.
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