9月7日、国際医療福祉大学赤坂キャンパスで「DNPシンポジウム2024」が開催されました。高度実践看護師の最高学位「DNP」コースの修了生が語ったDNPの魅力について、レポートします。
DNP(doctor of nursing practice)は、大学院において新たな知識を生み出す研究活動ではなく、現時点で明らかにされている知見をもとに、それを臨床の場で実践・応用することで問題解決を図る研究を行います。また研究者をめざすコースが一般化をめざして研究を行うのに対し、DNPコースにおいては受講生自身のフィールドの改革・変革に向けた「プロジェクト研究」を行うことが特徴になっています。
この日は3名のDNPコース修了生および履修生によるシンポジウムに続き、「日本におけるDNPの必要性」と題した横浜市立大学・叶谷由佳教授による指定発言と意見交換が行われました。
変革に向けた手法を学び、周囲の共感につながったDNPコースでの学び
最初に登壇した虎の門病院・三谷千代子さんは、看護の質を高めていくための職場環境づくりに取り組むなかで体系的な人材育成の必要性を感じ、その“変革力”をつけるために進学することを決めたと語りました。
「エビデンスのある介入や取り組みを効果的・効率的に取り入れ、維持することを目的とするDNPで取り組む実装研究の手法を学び、周囲に共感を得てもらい、変革の普及につながっている」という実感などが述べられました。
見方・考え方の変化を実感したDNPコースでの学び
続いて登壇した北里大学病院・木村ゆみ子さんは小児看護を専門とし、医療的ケア児とその家族の課題解決に寄り添う組織づくりに取り組んできました。そのなかで先行研究を調べたところ、示された知見をどのように自組織に取り入れるかで悩み、「研究と実践をつなぎ、よりよい実践のための研究を行うためにDNPコース進学を決めた」と語りました。
続いて印象に残っている講義の例を3つ挙げ、「これまでの見方・考え方が変わるのを感じた」と、実感を述べました。
5つの力+「熱意」の重要性を感じるDNPコースでの学び
最後に登壇した島田市立総合医療センター・奈木志津子さんは、勤務先のある静岡県・島田市の「糖尿病に対する治療環境のニーズが高いが、診療体制が脆弱」という状況に対して、地域も含めた看護サービス提供のしくみを変革する必要性を感じてDNPコースに進学しました。
特に糖尿病性神経障害の重症化予防に関する同市の事業が未介入であったことから、「糖尿病性足病変の予防と重症化防止に向けた集学的フットケアプログラム」を実装する研究に取り組む予定であると語りました。
大学院での学びを受け、DNPには「リーダーシップ」「判断力」「変革推進力」「発信力」「実践能力」という5つに加えて「熱意」が求められる、と話を締め括りました。
DNPの展望や課題について、活発な意見交換がなされた
シンポジウム、指定発言のあとには意見交換の時間が設けられ、DNPコース修了者の「地域に対する貢献」「病院等の組織での役割発揮に向けた展望」「論文作成などの成果の発信に向けた課題」といった話題に関して、修了者や関係者を中心に実感や感想に基づいた発言がありました。
日本では2024年現在、3つの大学院で開講されているDNPコース。看護実践を変革したいという想い・意識がある参加者の熱意を強く感じるイベントとなりました。
○概要
DNPシンポジウム2024「実践と組織を変革するDNPの魅力」
日程:2024年9月7日(土)
会場:国際医療福祉大学 東京赤坂キャンパス
共催:国際医療福祉大学、聖路加国際大学、北里大学
HP:https://www.iuhw.ac.jp/daigakuin/news/event/16307.html