患者さんの体験・心理についての「研究」を原著者に紹介してもらい、臨床で活用したいこころのケアを探ります。今回は冠動脈インターベンション(PCI)後の患者さんの心理についての研究です。

PCI後の患者さんは退院後に心臓病のことをどう捉えている?

PCI後の患者さん

 虚血性心疾患の患者さんは経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention、以降PCI)による治療のあとも 、療養行動を継続する必要があります。 しかし、実際に療養行動の修正や継続が困難な患者さんがおり、なかには再狭窄をきたしたり、新規病変が発見されたりと、繰り返しPCIが施行される患者さんもいるのが現状です。

 私たちの先行研究1で、PCIを繰り返す患者さんは、初めてPCIをしたときには心臓を治療することへの不安や怖さ、心臓病であったことの驚きがありましたが、 治療をしてから自分の心臓が治ったという思いにつながるプロセスがあることがわかりました。この“心臓が治った”という思いが「心臓病であることの意識」を薄れさせ、療養生活の修正や継続を困難にさせるのではないかと考えました。

 そのため、PCI入院時から退院後の外来通院中において「心臓病であることの意識」が実際にどのように推移し、どの時期から薄れていくのかを明らかにし、看護支援が必要な時期や内容を検討し、療養行動の修正と継続につながるような患者教育や継続的な看護支援につなげたいと考えました。

本研究は、以下の倫理的配慮のもとに実施されたものです。
●本研究は、研究倫理審査委員会の承認を受けて行っています。
●対象者には口頭および文書で研究目的・方法・参加の自由・拒否や途中辞退の自由・個人情報の保護などを説明し、同意をいただいて実施しました。
●面接は、身体的・心理的な状態に常に注意を払いながら行いました。

研究の方法

疑問(調べたこと)
●入院から退院後の外来通院中、「心臓病であることの意識」はどう推移していく?

研究対象
●PCI目的で入院し、PCI後に外来に継続通院している患者さん14名(男性13名、女性1名、46~76歳)

研究方法
●入院時と退院時、外来通院時(初回・2~3か月後・6か月)の計5回にわたり半構成的面接を行った
●「虚血性心疾患に対する思いや考え・理解」と「現在の症状を含む体調や回復感」などについて自由に語ってもらった

*【半構成的面接】ある程度の質問項目をあらかじめ決めておくが、対話の流れに応じ、表現や順序を変更して質問する面接法。

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