11月に発売された『「解剖」+「はたらき」とリンクする 整形外科の疾患と治療』。スポーツ診療にも精通した部位別スペシャリストの医師たちが、頻度の高い慢性疾患と外傷をていねいに解説した1冊です。
そんな本書の試し読み記事を、全3回でお届け!第3回は「変形性膝関節症」についてです。
【第1回】整形外科ナースに向けて解説!腰椎疾患:腰椎圧迫骨折(骨粗鬆症性)
【第2回】整形外科ナースに向けて解説!肩の慢性疾患:腱板断裂
1 病態
変形性膝関節症は、膝関節内の構造変化に伴い、炎症や移動時の膝関節痛を生じ、移動機能が低下する運動器疾患です。
軟骨の変性と摩耗が主な原因と考えられていましたが、近年では内反膝(O脚)のようなアライメント変化、骨棘形成、滑膜炎、半月板逸脱、軟骨下脆弱性骨折(膝関節特発性骨壊死)に代表される軟骨下骨病変なども、すべて変形性膝関節症の病態の1つであると考えられるようになってきています。
アライメント▶アライメントは一般的には「整列・配列」といった意味があります。下肢でこの単語を用いる場合は、いわゆるO脚・X脚などの脚の並びのことをいいます。
変形性膝関節症の病態
●軟骨の変性と摩耗
①内反膝(O脚)では、体重が膝の内側にかかりやすい
②膝の内側に体重がかかり続けていると、内側の半月板が損傷し、逸脱する
③半月板が逸脱し軟骨同士が衝突することで、軟骨下骨同士がぶつかり合い、痛みを生じる(Ⅰ)。また、削れた軟骨の破片が滑膜に付着し、炎症(滑膜炎)を起こして痛みを生じる(Ⅱ)
④軟骨がすり減り、骨同士がくり返し衝突することで、骨が異常増殖して骨棘を生じる
●軟骨下脆弱性骨折(膝関節特発性骨壊死)
O脚による内側関節面への負担などを背景として、軟骨下骨が陥凹するように骨折を起こすことがある
2 症状
膝の痛みや可動域制限、関節水腫(膝に水が溜まる)、内反膝(O脚)、跛行(足を引きずるなど、正常ではない歩行)を生じます。
3 検査
単純X線写真では、病状の進行に伴い、軟骨摩耗や半月板逸脱を反映した関節裂隙の狭小化、骨棘形成が明らかとなります。
変形性膝関節症(膝OA)の単純X線を用いた重症度分類
Grade Ⅱ以上を「膝OAあり」と判定する。