エアリークを観察するポイントをチェック。「排気」を目的にする場合、「排液」を目的にする場合、それぞれのエアリークの変化を紹介します。

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Q. エアリークはどう観察する?

「排気」目的の場合は、通常、エアリークが見られ、治癒につれて減少していきます。「排液」目的の場合は、エアリークがほぼ見られません。

エアリークの観察はどこで行う?

 胸腔ドレーンの挿入目的により、エアリークを観察する目的も変わってくることに注意が必要です。
 胸腔ドレナージ用の排液バッグは、大きく3つの部屋に分かれています。そのなかで、エアリークの観察を行うのは水封室です(例えば、チェスト・ドレーン・バックでは中央の位置、図1)。この水封室の液体部を空気が通過するときに、エアリークが観察されます。

図1 水封室の位置

水封室の位置
チェスト・ドレーン・バック(SBカワスミ株式会社)の場合。製品により水封の位置は異なる

排気を目的とする観察方法は?

 気胸(自然気胸、外傷性気胸など)は、胸腔内に貯留した空気で肺が圧迫されることで再膨張が妨げられ、呼吸困難に陥ります。その貯留した空気を排気する目的で、胸腔ドレーンが挿入されます(図2-①)。

図2 水封室のエアリークの変化(正常の状態)

水封室のエアリークの変化(正常の状態)

1)挿入初期:エアリークは持続して観察される

 胸腔内に貯留した空気が排気されるため、エアリークは持続して観察される場合が多いです。

2)挿入中期:徐々に消失

 胸腔内の空気が排気され、陰圧が保たれ、肺が正常に膨張するにつれてエアリークは消失していきます。エアリークが減少すると、胸腔ドレーン挿入側の呼吸音が聴診されるようになります。継続して観察する必要があります。

3)抜去前:一時的に見られることも

 エアリークが落ち着いたあとでも、咳嗽など高い圧がかかる場合には、一時的にエアリークが見られることもあります。ですが、持続しなければ問題ありません。

排液を目的とする観察方法は?

 血胸、胸水貯留、術後など、排液を目的にする場合には、基本的にエアリークは多く見られません
排液目的であるのに、持続してエアリークが観察される場合には、胸腔からではなくドレーンや排液バッグからの漏れを疑う必要があります(図2-②)。

その他の場合の観察方法

 突然エアリークが増加した場合は、次の原因が考えられます。

●病状の問題:気胸の発生や悪化
●管理の問題:ドレーンや排液バッグの接続外れ、ドレーンの位置のずれや損傷

 その際の確認方法として、まず胸腔ドレーン刺入部に一番近い部位で一時的にクランプします(図3-1)。このときエアリークが消失した場合には、クランプした部位より患者側に問題があるため、病状の変化を疑います。

 それでもエアリークが持続する場合には、クランプした部位より排液バッグ側に問題があるため、回路点検を行います。クランプ部位を徐々に排液バッグ側に進めていって、エアリークが消失した場合は、その部位とその前にクランプした部位の間に問題があると考えられます(図3-2~4)。

図3 エアリークが増加した場合の原因の切り分け

エアリークが増加した場合の原因の切り分け
1. 岸田良平編:心嚢,胸郭,縦隔ドレーン.重症集中ケア 2010;8(6):40-45.
2. 岸田良平編:胸腔ドレナージの管理.救急看護&トリアージ 2013;2(6):40-43.
3. 長谷川隆一:呼吸器系障害の治療・ケア.道又元裕,他, 編:クリティカルケア実践の根拠,照林社,東京,2012:74-75.
4. 笹井智子:胸腔ドレーンのエアリークは、どこに注目?.特集・見逃してはいけない! 腹腔・胸腔ドレーンの管理.エキスパートナース 2011;27(12):27-31.

※この記事は『エキスパートナース』2018年12月号特集を再構成したものです。当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載および複製等の行為を禁じます。