この春に発売された新刊書籍『急性期病院の看護師1200人の?から生まれた 看護のギモン』(西口幸雄、久保健太郎 編著、照林社発行)は、臨床看護師へのアンケートで集まったリアルな疑問に、各領域の専門職が知見やエビデンスをもとに回答。カテーテル・ドレーン、薬剤、呼吸管理、急変対応など、18テーマ・155項目をのことがわかる「看護のためのQ&A事典」です。

 今回、特別に試し読み記事を公開しました。ぜひ、この機会に読んでみてください!

カテーテル・ドレーンのギモン

 カテーテルやドレーンは、どの診療科や病棟であっても扱う機会があるからでしょうか、薬剤に次いで2番目に疑問が多いテーマでした(カテーテル・ドレーンは21項目、薬剤は32項目)。
 特に尿道カテーテル、中心静脈カテーテル、胸腔ドレーンに関する疑問が多く寄せられました。
(久保健太郎)

胸腔ドレーンの呼吸性移動が消失した。どうすればいい?

答える人
医師(呼吸器外科) 中嶋 隆
呼吸性移動が消失としたということは、チューブが閉塞しているということです。
●問題のない閉塞なのか、対処すべき閉塞なのか、閉塞の原因を調べましょう。

呼吸性移動とは

 胸腔ドレナージは、胸腔内に貯留した気体や液体を体外に排出する治療法です。
 胸腔内は生理的に陰圧となっているため、ドレーンを留置しただけでは、体外から胸腔内に空気が逆流してしまいます。このため胸腔ドレーンバッグは、吸引圧を調整する「圧制御室(吸引圧制御ボトル)」、空気の逆流を防ぐ「水封室」、「排液ボトル」を組み合わせた3連ボトルシステムとなっています。呼吸に関連して胸腔内圧は変動するため、水封室の水面も呼吸に合わせて上下に変動します。これを呼吸性移動といいます()。

呼吸性移動が消失した原因を確認する

 呼吸性移動が消失するということは、胸腔内の圧力が水封室に伝わっていないということなので、胸腔ドレーンチューブがどこかで閉塞していることになります。どの場所でどのような原因で閉塞しているかを考えなければいけません。

原因1:チューブが押し潰されている

 チューブが屈曲したり、患者さんの体の下敷きになっていないか、確認します。またチューブ内に粘度の高い排液で閉塞していないか、チューブ内を観察しましょう。

原因2:胸腔ドレーンチューブ先端が肺と胸壁に挟まれて閉塞している

 肺が完全に拡張すると、胸腔内のスペースはほぼなくなっているため、呼吸性移動が出るほどのスペースがなくなってしまいます。このような場合は治療が奏功していると考えられるため、このまま経過をみていて問題ありません。
 
 しかし、呼吸性変動がなくなっているにもかかわらず、皮下気腫が増えてくることもあります。これは、肺からの空気漏れが胸腔内の癒着やドレーン先端が肺と胸壁に挟まれてうまくドレーンから拾うことができないために起こります。このようなときには患者さんの体位を変えると呼吸性移動が復活することがありますので試みてみましょう。

1)医薬品医療機器総合機構:胸腔ドレーン取扱い時の注意について.PMDA医療安全情報 No.60,2020.
https://www.pmda.go.jp/files/000236187.pdf(2023.7.26アクセス)
2)藤野智子,福澤知子編:看るべきところがよくわかる ドレーン管理.南江堂,東京,2014.
3)中根茂喜:気胸 治療の現場を見てはじめて理解ができた胸腔の解剖生理と胸腔ドレーンのしくみ.薬局 2023;74(4):712-713.

その他のギモンは書籍で!

急性期病院の看護師1200人の?から生まれた 看護のギモン
西口幸雄、久保健太郎 編著
A5・352ページ・定価2,970円(税込)
照林社

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